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2019.08.30

活用事例

[ロボットが活躍する現場vol.7]ロボットで歯車生産、協働型も使いこなす【前編】/岡本工機

岡本工機(広島県福山市、菊地正人社長)は、歯車や受注生産の工作機械を製造するメーカーだ。広島県内に3つの工場を構え、本社工場や尾道工場ではそれぞれ10台ほどの産業用ロボットが稼働し、府中工場にも協働ロボットシステムなどを導入した。「ロボットがあると生産量も品質も安定する。システム構築や動作変更を自分たちでこなせることが重要」と菊地社長は話す。

合計20台以上のロボットが稼働

岡本工機はロボットを積極的に導入する(写真は府中工場のロボットシステム)

 岡本工機は平面研削盤のトップメーカーである岡本工作機械製作所の子会社。岡本工作機械製作所が1944年に横浜から疎開して設立した広島工場をルーツとする。
 自社で生産設備を製造でき、歯車が完成するまでの全工程を社内で完結できる一貫生産体制に強みを持つ。生産能力は一月当たり55万個で、生産拠点は広島県内に3つ、中国の江蘇省に1つ。

 歯車の生産には積極的に産業用ロボットを使い、福山市の本社工場では10台強、尾道市の尾道工場でも約10台、府中市の府中工場でも3台のロボットが稼働する。加工機への加工材料の付け替えなどをロボットが担う。ロボットは全てファナック製だ。

100個でもロボットで作る

「ロボットで生産性が高まり品質も安定する」と話す菊地社長

 20年以上前にもロボットを付けた設備を製作したことはあるが、工場に本格的にロボットを導入し始めたのは17年前から。まずは、作業者1人が22台の加工機を担当していた現場にロボットを入れた。加工材料の付け替えなどで担当者が工場内を走り回っており、これではあまりにも大変だとロボットで自動化した。

 「わが社が製造するのはオーダーメードの小ロット品が多いが、その現場では500個ほどの中量生産もあり、ロボットに置き換えやすいと考えた。1台入れてみると『生産性が高まり品質も安定する』と分かり、次々にロボットを増やした」と菊地社長は言う。今では歯車100個でもロボットで生産する。

 歯車加工機を自動化するには、ローダーと呼ばれる専用装置もあるが、「ロボットならもし故障しても、直るまでは人が作業を代替できるため、生産が止まらない。作る物や設備が変わった際は他の場所で使えることも魅力」と菊地社長は話す。

自社でシステムを構築、変更できる

自社でシステム構築ができる(写真は府中工場のロボット)

 当初はロボットシステムの構築をファナックに依頼していたが、今では自社の生産技術課の社員自らがロボットシステムを構築する。作業の一部を外注することもあるが、ロボットに操作を覚えさせるティーチングまで含め、あらゆる工程を自社でできる。
 複雑なロボットシステムを一から構築できる技術者は3人。簡単な動作プログラムの変更などができる人は約50人いるという。

 「システム構築やティーチングを社外に全て委託するのではなく、社内でできるようにすることが重要。自社でできれば柔軟に運用でき、さまざまな改善もできる」と菊地社長は言う。

協働ロボットシステムを昨年初めて導入した

 同社はこれまで、安全柵で囲って使う一般的な産業用ロボットを使ってきたが、昨年初めて、府中工場に安全柵なしで使える協働ロボットを導入した。

 「初めての協働ロボットなので、立ち上げ時に多少の苦労はあったが、設定などを工夫することで効果的なシステムを構築できた」と菊地社長は語る。
 後編ではその協働ロボットシステムに焦点を当て、工夫した点などを詳しく紹介する。

――後編へ続く
(編集デスク 曽根勇也)



関連記事:[ロボットが活躍する現場vol.7]ロボットで歯車生産、協働型も使いこなす【後編】/岡本工機(9月2日アップ予定)

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