[注目製品PickUp! vol.19]同業者も驚く特殊構造で、いろんな物を吸着する【後編】/妙徳「バルーンハンドSGBシリーズ」
コンバムの開発で真空吸着の機器に特化
1951年に創業した妙徳は光学機器向けの部品加工会社だった。妙徳という社名は、本社の近隣にある寺院「妙徳寺」に由来する。泉陽一執行役員は「創業者の伊勢育二郎が妙徳寺に相談し、名前をそのままいただいた。『寺院は倒産しない』ことにあやかった」と話す。
「部品加工の下請け仕事ばかりでは将来がない」と一念発起した伊勢氏は、自社製品を開発。そのうちの1つがコンプレッサーで作った圧縮空気を使って吸引力を生み出す真空発生器(エジェクター)「CONVUM(コンバム)」だった。コンプレッサーから送り出された圧縮空気を使い、コンバム内部で気圧差を生み出す。その気圧差により吸引口から空気を吸い込む。名称は「コンプレッサー+バキューム」の略。約40年前のコンバムの開発以後は、真空吸着の機器に特化した。
他社製品であっても、エジェクター全般を「コンバム」の名称で呼ぶ顧客も多いという。国松孝行営業部長は「ステープラーをホッチキスと呼ぶような感じ。だが、コンバムはわが社のオリジナル」と胸を張る。
コア技術は変わらないが、主要顧客は移り変わる
実はロボットハンドとして使われ始めたことで、真空吸着の機器は大きく変化した。
従来は専用機に搭載される要素部品に過ぎなかった。外側からは見えにくい専用機の中で、板ガラスや半導体、電子部品など常に同じ対象物を同じような動作で吸着する。つまり、特定の対象物に特化した構造で、デザイン性をさほど重視しない製品が多かった。
ロボットに付属すると、真空吸着用の機器は外部から見えやすい。そのため、デザイン性が求められるようになった。ロボットの動作性を高めることなどを理由に、ロボットハンドには小型化のニーズもある。そして何より、ロボットの汎用性の高さに合わせて、ハンドも1種類で多様な形状を吸着する必要性が出てきた。そこで開発したのが、バルーンハンドSGBシリーズだった。