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2019.11.21

連載

[注目製品PickUp! vol.19]同業者も驚く特殊構造で、いろんな物を吸着する【後編】/妙徳「バルーンハンドSGBシリーズ」

妙徳(東京都大田区、伊勢幸治社長)は、多種多様な対象物を吸着できる真空式のロボットハンド「バルーンハンドSGBシリーズ」を開発した。約40年間、真空機器に特化してきたノウハウを生かしたという。同社は創業当初、光学機器関連の部品を加工する町工場だった。「下請け仕事ばかりでは将来がない」と一念発起した創業者がさまざまな製品を開発。そのうちの一つが真空発生器「CONVUM(コンバム)」だった。

コンバムの開発で真空吸着の機器に特化

 1951年に創業した妙徳は光学機器向けの部品加工会社だった。妙徳という社名は、本社の近隣にある寺院「妙徳寺」に由来する。泉陽一執行役員は「創業者の伊勢育二郎が妙徳寺に相談し、名前をそのままいただいた。『寺院は倒産しない』ことにあやかった」と話す。

 「部品加工の下請け仕事ばかりでは将来がない」と一念発起した伊勢氏は、自社製品を開発。そのうちの1つがコンプレッサーで作った圧縮空気を使って吸引力を生み出す真空発生器(エジェクター)「CONVUM(コンバム)」だった。コンプレッサーから送り出された圧縮空気を使い、コンバム内部で気圧差を生み出す。その気圧差により吸引口から空気を吸い込む。名称は「コンプレッサー+バキューム」の略。約40年前のコンバムの開発以後は、真空吸着の機器に特化した。

 他社製品であっても、エジェクター全般を「コンバム」の名称で呼ぶ顧客も多いという。国松孝行営業部長は「ステープラーをホッチキスと呼ぶような感じ。だが、コンバムはわが社のオリジナル」と胸を張る。

コア技術は変わらないが、主要顧客は移り変わる

自社の歩みについて話す泉陽一執行役員

 この40年で吸着機器の市場規模は大きくなり、同社の主要顧客も移り変わってきた。泉執行役員は「わが社のコア技術は変わらない。真空技術の新たな使われ方が登場し、適用業界は広がっている。それぞれ業界のニーズに、開発方針を合わせてきた」と話す。

 吸着機器に特化し始めた当初は、鉄板やガラスなど板状の対象物の搬送が大半。約20年前には半導体部品や電子部品の搬送用途に普及した。そして、10年ほど前からはロボットハンドとしての用途が増えた。

外見がシンプルなSGB

 実はロボットハンドとして使われ始めたことで、真空吸着の機器は大きく変化した。
 従来は専用機に搭載される要素部品に過ぎなかった。外側からは見えにくい専用機の中で、板ガラスや半導体、電子部品など常に同じ対象物を同じような動作で吸着する。つまり、特定の対象物に特化した構造で、デザイン性をさほど重視しない製品が多かった。

 ロボットに付属すると、真空吸着用の機器は外部から見えやすい。そのため、デザイン性が求められるようになった。ロボットの動作性を高めることなどを理由に、ロボットハンドには小型化のニーズもある。そして何より、ロボットの汎用性の高さに合わせて、ハンドも1種類で多様な形状を吸着する必要性が出てきた。そこで開発したのが、バルーンハンドSGBシリーズだった。

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