ロボットは危ないものだと認識していますか?/日本認証
まずはリスクを知ることから
人と同じ空間で使える協働ロボットが広く知られるようになったが、ロボットを使う現場には常にリスクが潜んでいる。
「99.9%大丈夫だとしても、1回の事故が取り返しのつかない損害になるかもしれない。ロボットシステムは長期間使われる設備なので、安全対策は長い目、広い目で見なければならない」と日本認証の佐川社長は話す。
ロボットシステムの構築には、ロボットメーカーや周辺装置メーカー、それらを組み合わせてシステムにするSIerなど、多くの人や物が関わる。各メーカーはそれぞれの製品の安全性は考慮しても、システムにしたときの安全性まで考えることは少ない。
また、SIerは本来、メーカーとユーザーの間で効率的なシステム設計と安全確保の役割を担うが「安全設計については十分考えられているとは言えず、システム全体の安全確保の責任の所在が明確でないのが現状」と佐川社長は言う。
ユーザーにとっては、現場でシステムを組み上げたSIerが、何かあったときの相談先になりがちだ。だからこそ、佐川社長は「ユーザーの現場で何か事故があったとき、SIerが責任を問われる可能性は十分にある。まずはロボットを使う現場には危険が潜むことと、リスクのあるビジネスであることを認識することが重要」と指摘する。
RSAを創設し価値向上に努める
日本認証は、産業機器全般を対象としてリスクアセスメント(リスクの確認や評価、対処)とリスク低減の能力を3段階で認証する「セーフティアセッサ(SA)資格制度」を04年に開始した。
基礎レベルの資格から順に「セーフティサブアセッサ(SSA)」「セーフティアセッサ(SA)」「セーフティリードアセッサ(SLA)」の3つだ。日本電気制御機器工業会(NECA、会長・尾武宗紀オムロン執行役員)が制度化したもので、同社が運用する。09年には「機械運用安全分野」と「防爆電気機器安全分野」の2分野に分けた入門者向けの「セーフティベーシックアセッサ資格(SBA)」が追加された。
現在までに資格者2万名、資格者保有企業は1700社を突破している。
その後、製造業を含む多くの産業における安全意識の向上や安全対策の進歩、普及のための団体セーフティグローバル推進機構(IGSAP、会長・向殿政男明治大学名誉教授)が、18年に「ロボットセーフティアセッサ資格制度(RSA)」を創設した。
製造現場にロボットが増えていることを背景に、安全意識を高めるのが狙い。業界としてロボットの安全に関する資格認証制度を必要としていたため、RSA創設には日本ロボット工業会(会長・橋本康彦川崎重工業取締役)のメンバーも関わった。
ロボット特有の安全知識だけでなく、ロボットと組み合わせて使われる設備全般の知識がなければ、安全なロボットシステムは構築できない。そこで、SA資格を前提に、SAとRSAの両試験に合格して初めてRSAの有資格者となる仕組みを採用した。
いずれも日本認証が資格制度の運用を担い、現在までに346人がRSA資格を取得している。