[注目製品PickUp!vol.27]熟練工の力加減をロボがまねる【前編】/新東工業「ZYXer」
過酷な作業から人を解放
新東工業のジクサーは、産業用ロボットの本体とハンドの間に取り付ける力覚センサーで、今年4月から愛知県の同社新城事業所で量産を開始した。年間で1000~3000個の製造を予定する。ロボット用力覚センサーの事業は昨年2月に立ち上がったばかりだが、すでにいくつかの大手ロボットメーカーのオプションなどで採用実績がある。
同社調べによると、ジクサーは従来のセンサーに比べ、10倍の精度を持つ。実際の荷重と計測データの差が限りなく小さいため、繊細な力加減が必要な精密組み立てやバリ取り、研磨作業などに活用できる。
人の動きを覚えさせるだけなら、位置情報だけでも問題はない。しかし、実際の作業は、物を押し込んだりする力加減が重要だ。力覚センサーを利用することで、ロボットは人の動きだけでなく、力加減まで再現できる。「バリ取りや研磨など、過酷な作業や熟練の技が必要だった所から、作業者を解放したい」と田名網グループマネージャーは期待する。
ノイズの少ないひずみゲージ式
また、計測方法には、タッチパネルなどで利用される「静電容量式」ではなく、内部に設置した金属板が外力によって伸縮する変化を計測する「ひずみゲージ式」を採用。
静電容量式は、タッチパネルの反応が人によって変わるように、同じように押しても反応が異なる場合がある。実際の力なのか、ノイズなのかも判断しにくく、小さな力の変化が分かりにくい。一方、ひずみゲージ式は低荷重域から高荷重域までノイズが発生しにくく、繊細な力加減も認識できる。
鋳造装置を製造する新東工業が、なぜロボット用の力覚センサーの開発に取り組んだのか。新しい事業の柱と「これからの日本企業が生き残るためには欠かせないのがセンサーだ」と田名網グループマネーシャーは説明する。
――後編へ続く
(ロボットダイジェスト編集部 渡部隆寛)