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2020.10.22

イベント

中小企業のロボット導入のポイントをセミナーで/FA・ロボットシステムインテグレータ協会

ロボットのシステム構築を担うシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の業界団体、FA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会、会長・久保田和雄三明機工社長)は10月19日、ウェブセミナー「中小企業におけるロボット導入事例紹介セミナー」を開催した。SIerの会員企業や公的機関の関係者など約150人が視聴した。

ロボットは多品種少量生産に対応するための装置

冒頭であいさつしたSIer協会の久保田和雄会長

 SIer協会が10月19日に開いたセミナーでは、複数台のロボットシステムを運用する中小企業の事例を取り上げ、中小企業がロボットを導入する上で重要なポイントを詳しく解説した。

 SIer協会の久保田会長は「中小企業にロボットを入れるには大企業の時とは違った視点が必要で、大企業の事例をそのまま適用しても成功しない。今回のセミナーはロボットユーザーの『生の声』を聞ける貴重な機会。視聴者の皆さまの今後のロボット導入の一助になれば幸い」とあいさつした。

高丸工業は「中小企業へのロボットシステム導入について」をテーマに講演

 最初に、SIer協会の幹事会社を務める高丸工業(兵庫県西宮市)の高丸正社長が「中小企業へのロボットシステム導入について」をテーマに講演した。
 「ロボットはそもそも、大量生産(量産)ではなく多品種少量生産に対応するために開発された装置。『ロボットは量産向きで、一品物や多品種少量生産には不向き』との誤解をいかに取り払うかが重要」と述べた。その上で「ロボットを有効に活用するには、これまで人手でやっていた作業もロボットに合わせた形に変えていかなければならない」とも強調した。

2社の中小企業が講演

  • KPファクトリーは溶接作業をロボットで自動化

  • 山田製作所は工作機械に加工対象物を脱着する作業をロボットで自動化

 その後、中小企業のKPファクトリー(兵庫県三木市)の吉崎真一社長と、山田製作所(愛知県あま市、山田英登社長)の山田剛士常務がそれぞれ登壇し、自社のロボット導入の経緯や成果などを発表した。

 KPファクトリーはロボットで鉄道車両部品の溶接作業を自動化した事例を紹介。溶接ロボットシステムの初号機を導入した2017年からの3年間で取り組んだことなどを説明した。
 初めは稼働率を気にせず、ロボットの担当者に任命した若手社員にティーチング(ロボットに動作を覚えさせること)を繰り返し練習させたという。2年目から手作業で溶接していた部品をの製造を少しずつロボットに置き換え、3年目にはロボットがする作業と職人の作業を明確に分担し、ロボットが担う作業量を増やして稼働率を高めた。

 一方、山田製作所は高精度な研削加工を得意とする部品加工会社で、2台のロボットシステムを運用している。工作機械に加工対象物を脱着する工程を自動化した。
 山田常務はロボット導入のきっかけになった、10年前から取り組む「作業の標準化」についても詳しく解説した。研削加工を標準化し、標準化できたからこそロボットに任せることが可能になったと言う。「これまでは作業者のスキルやコンディションに依存していたが、ロボットを入れたことで研削加工の属人化を解消できた」と説明する。

ロボット導入実証事業の追跡調査結果報告

 セミナーの後半では、産業機械の部品加工を手掛ける新征テクニカル(兵庫県尼崎市)の与那嶺まり子社長も加わり、KPファクトリーの吉崎社長、山田製作所の山田常務、高丸工業の高丸社長、SIer協会の久保田会長らで座談会を実施した。また、視聴者から寄せられた質問にも回答した。

 最後に、日本ロボット工業会(会長・小笠原浩安川電機社長)の高本治明客員研究員が「ロボット導入実証事業 追跡調査結果報告」と題し、15年度に実施したロボット導入実証事業の追跡調査の結果を紹介した。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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