[注目製品PickUp!vol.31]機械要素部品メーカーが誘導システムを開発したワケ【後編】/THK「SIGNAS」
経営理念を体現する製品の一つに
自律移動型の伸び悩みから得た着想
SIGNASで解決したい課題は、生産現場の人手不足だ。工場内では、加工や組み立てなど生産に直接関わる工程に関しては、機械による自動化が進む。一方、機械間の搬送や加工前の準備は、人が担うケースがまだまだ多い。人が担っている作業の中でも「搬送」は単純作業に当たる。
この搬送作業を自動化すべく、この10年ほどでAGVや自律移動型搬送ロボットの普及が進んだ。しかし、「ある統計によると市場の9割が磁気テープ式。自律移動型の搬送ロボットは便利なのに伸び悩んでいる。そこに新たなニーズがあるはず」(星野常務執行役員)。
そこで、経路を簡単に設定(教示)でき、低価格で導入できるAGV向けの新たな誘導システムを開発した。
工場以外でも使える
IMT事業部ロボット部の北野斉部長は「直感的な操作で教示でき、サインポストを置くだけで稼働するAGV。工場以外にも用途はあるはず」とみる。
現在、総合建設業の東急建設と共同で、建設現場でSIGNASを搭載したAGVの実証実験を進める。建設業では、製造業以上に人手不足が深刻で、現場での搬送自動化のニーズもより高い。建設現場でよく使われる「三角コーン」にサインポストを付けて使用する。
今後は、顧客ニーズに応じたAGVの車体を開発するだけでなく、AGVメーカーに誘導システムとしてSIGNASだけを販売する考えもあるという。工場内の搬送はもとより、建設現場や屋外の農業分野でも応用できると見込む。「可能性は無限大」(星野常務執行役員)と今後に期待する。
(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)