[特集 物流機器は新世代へvol.3]群雄割拠のAGV・搬送ロボット【前編】
AGV・搬送ロボットに脚光
SLAM式AGVは自律走行型搬送ロボット(AMR)とも呼ばれ、新世代の物流機器として認知度を高めている。既存の環境を大きく変えなくても導入でき、障害物を回避しながら搬送できるなど運用の柔軟性が高い。工場内で物を運ぶ構内物流や、倉庫・物流センターでの搬送などに使われる。物流センター向けの製品では立体自動倉庫などと比べると初期投資を抑えられ、台数の増減で処理能力を柔軟に調整できるため、近年特に注目を集める。
オムロンの「LD / HDシリーズ」や、日本電産シンポ(京都府長岡京市、西本達也社長)の「S-CART(エスカート)」など、SLAM式AGVに注力する企業は多い。豊田自動織機の社内カンパニーのトヨタL&Fなども自律移動型のAGVを開発し、展示会などで参考出品している。
参入増える海外ベンチャー
海外ベンチャー企業の参入も活発だ。
デンマークのモバイルインダストリアルロボット(MiR)は2019年、横浜市に事務所を開設し、日本市場に本格参入した。同じくデンマークに本社を置く協働ロボットメーカーのユニバーサルロボット(UR)と同様、米国の半導体検査装置メーカーテラダインの傘下にある企業だ。搭載する多くのセンサーで周囲360度を監視しており、安全性が高いのが特徴という。
中国で15年に創業したGeek+(ギークプラス)は、17年に日本法人ギークプラス(東京都港区、佐藤智裕社長)を設立し、国内でも積極的に展開する。集荷のために棚に物を取りに行くのではなく、作業者の所に棚を運んでくるタイプの製品や、仕分けに利用できる製品などを幅広くそろえる。世界200社に1万台以上が導入され、国内でも多くの導入実績を持つ。20年7月には大阪府吹田市にあるアスクルの物流センターに搬送ロボット「P500R」を111台導入したと発表した。
中国・深センに本社を置くシリウスロボティクスは20年1月、日本法人シリウスジャパン(東京都江東区、グレース・ニエ総経理)を設立。集荷(ピッキング)補助ロボット「FlexComet(フレックスコメット)や新機種FlexSwift(フレックススウィフト)を国内で提案する。集荷した物を入れるコンテナと操作・表示用のタブレットを搭載したAGVで、集荷対象物がある棚の前まで自動で移動する。作業者はその棚まで行き、タブレットに表示された対象物をコンテナに移すだけでピッキングができる。
通販物流支援サービスなどを手掛ける関通の、兵庫県尼崎市にある関西主管センターに導入され、従来の約半数の従業員で、2.5倍の生産性を見込めるという。
総合商社のフジテックス(東京都新宿区、一森雄介社長)は8月24日、中国ForwardX Robotics(フォワードエックス・ロボティクス)の製造業向けAGVを扱い始めた。エレベーターとのシステム連携により、AGVによるフロア間の搬送もできる。
その他、インドメーカーのGreyOrange(グレイオレンジ)の「Ranger(レンジャー)」なども国内での導入が進む。