[気鋭のロボット研究者vol.18]「遊び」が引き出す制御のゆとり【前編】/中央大学 大隅久教授
ロボットの能力を引き出す可能性が広がる
大隅久教授の研究の共通点が、「冗長自由度」だ。さまざまな機構の可動範囲や姿勢の自由度を高めたり、反対に自由度を限定する構造や制御方法を研究する。
例えば、垂直多関節ロボットで物を持ち上げる。物を保持する位置は同じでも、ロボットは複数の姿勢を取れる場合がある。ロボットの各関節の位置やつかんだ物の重さと重心の関係で、ロボットの力の発揮しやすさや物を保持する安定性などの特性が変わる。
「自由度が高く、取り得る姿勢が多いと、それだけロボットの能力を引き出す可能性も広がる」と話す。
6本のワイヤで対象物をつり下げる
そこで、1台のロボットから2本、合計6本のワイヤで対象物をつり下げて、その位置制御をした。
つり下がるワイヤが「遊び」になり、ロボットの姿勢の自由度や誤差調整などのゆとりが生まれる。それにもかかわらず、対象物自体は揺れない。
「ロボットや周辺機器に一般製品を使って協調動作をできるので、実用化もしやすい」と評価する。
――つづく
(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)
大隅 久(おおすみ・ひさし)
1985年東京大学工学部卒。87年同大学院修士課程修了、91年工学博士を取得し、同専任講師。93年同助教授。94年中央大学理工学部助教授。2001年から現職。11年日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門長、13年~14年日本ロボット学会副会長などを歴任。17年~18年、21年日本時計学会会長。東京都出身の59歳。