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2021.06.28

[特別企画ラボラトリーオートメーションvol.1]研究所にロボットは普及するか?

ラボラトリーオートメーション(LA)――。聞きなれない言葉だが、実験や解析など研究所や実験室内の作業を自動化することをLAと呼ぶ。ロボットはLA化を実現するソリューションの一つだが、研究所での作業は一つ一つ内容が違うためロボットを活用するのが難しいとされる。人手不足などを背景に研究所でも自動化のニーズは高まっているが、果たしてロボットは今後どこまで普及するのだろうか? ロボットダイジェスト編集部では本日から3日間にわたり、LAの現状や最新動向をさまざまな角度から発信する。

世界のLA市場は52億ドル

実験には人が介在することが多い(写真はイメージ)

 LAとは、研究所や実験室内の作業プロセスを自動化することだ。研究所や実験室では、研究者がさまざまな分析機器や専用の実験装置を使い、手作業で一つ一つの実験をするケースが多い。サンプルの準備作業や実験結果のデータ解析など、実験以外にも数多くの作業があり、これらにも人が介在する。
 こうした労働集約型の作業を自動化し、研究者の業務効率化や実験コストの削減を目指すのがLAの狙いだ。

 他のあらゆる産業と同様に、近年は研究所や実験室でも人手不足が深刻だ。また、直近では新型コロナウイルス感染予防対策の一環で「3密(密集、密閉、密接)」の回避が求められるように。そのため、LAの需要は世界中で着実に高まっている。
 アイルランドに本社を置く調査会社、リサーチ・アンド・マーケッツによると2020年の世界のLA市場は52億1000万ドル(約5700億円)に達したという。「21年~26年の5年間で緩やかに成長する」との見通しも示した。

「まほろ」を活用した自律細胞培養システム(写真は理化学研究所のプレスリリース)

 自動化装置やソフトウエアなどLAソリューションは多岐にわたり、ロボットもLA化を実現するソリューションの一つに数えられる。

 日本では安川電機と産業技術総合研究所(産総研)が12年に共同開発した汎用の人型双腕ロボット「まほろ」が有名で、現在は産総研発のベンチャー企業のロボティック・バイオロジー・インスティテュート(東京都江東区、松熊研司社長)がバイオメディカル分野などへのまほろの導入支援に取り組む。
 昨年12月には理化学研究所生命機能科学研究センターの高橋恒一チームリーダーらの共同研究チームがまほろや人工知能(AI)を使い、人の手を介さない自律細胞培養システムを開発するなど、まほろの活用事例は徐々に増えつつある。

 しかし、実験作業は一つ一つ内容が異なる場合が多く、プログラム通りにしか動かないロボットを導入するのは難しいとされる。デンソーウェーブ(愛知県阿久比町、相良隆義社長)の澤田洋祐ソリューションビジネス推進部長は「研究所では一般的に、ロボットを使っても採算が取りにくい印象がある」と話す。

3日間にわたり紹介

 こうした環境下ではあるが、研究所や実験室にロボットを導入する企業も出始めた。その先駆者とも言えるのが、大手工業用薬剤メーカーの第一工業製薬だ。今年の夏をめどに、デンソーウェーブの小型協働ロボット「COBOTTA(コボッタ)」を導入してLA化の一歩目を踏み出す。

 そこで、ロボットダイジェスト編集部は今回、第一工業製薬やデンソーウェーブの取材協力を得て「ラボラトリーオートメーション特別企画」を実施する。本日から3日間にわたり、研究所や実験室でのロボット活用の現状やロボット導入の難しさなどをさまざまな角度から紹介する。
 明日掲載するvol.2は、第一工業製薬の橋本橋本賀之執行役員研究本部長とデンソーウェーブの澤田部長の対談記事だ。両社のキーマンにLAの現状や難しさなどを語り合ってもらった。
 最終日のvol.3では、第一工業製薬の四日市工場霞地区(三重県四日市市)の事例を紹介する。コボッタを導入する現場に訪問し、自動化する作業工程や同社の今後の展望に迫った。

 果たして、ロボットが「研究パートナー」として研究所や実験室に定着する日は来るのだろうか?

――vol.2に続く
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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