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2021.12.21

連載

[ロボットが活躍する現場vol.15]釣り具をつり上げピッキング/ハヤブサ

釣り針や浮き、重りなどと、これらをまとめた「仕掛け」と呼ばれる釣り具のメーカー・ハヤブサ(兵庫県三木市、歯朶〈しだ〉由美社長)がロボット倉庫を導入した最新の物流センターを稼働した。総投資額は23億円で、保管量は倍増、出庫に必要な時間は3分の1に短縮。昼夜二交代制の24時間稼働で対応したピッキング作業が、通常の8時間勤務でこなせるようになったという。ロボットが活躍する現場を早速見てみよう。

商品は2万点、きっかけは人材難

ロボット倉庫を導入した最新の物流センター

 ハヤブサは1959年、釣り針メーカーの田尻隼人商店として創業し、70年に現在のハヤブサを設立。釣り針から仕掛け、疑似餌のルアーなど幅広く商品を拡充して「ハヤブサ」ブランドを立ち上げた。さらに、99年には防水性や防寒性を備え、釣りからアウトドア、ゴルフの領域にまで広げた衣類ブランド「FREEKNOT(フリーノット)」を立ち上げるまでに成長。さらに犬や猫などのペット用品のブランドまで立ち上げ、ビジネスの幅を広げてきた。

ハヤブサが販売する仕掛け

 物流センターでは、ハヤブサブランドの釣り具、2万点を扱う。韓国や中国、インド、ベトナム、ミャンマーなどで製造した針や糸などを入庫し、全品を検査後に製品として保管する。これまでは本社社屋内にクレーン式の自動倉庫を導入し、繁忙期は昼夜勤の24時間体制で対応してきた。全国展開する釣り具の量販店も含め、釣具店別にピッキングして梱包した商品は、宅配便で各店舗に向けて出荷する。

 商品数の増加で、受注から出荷までのリードタイムの維持が難しくなったのに加え、2007年に近隣でアウトレットモールが開業。さらに、中国自動車道と山陽自動車道、六甲北道路の3つの高速道路の出入口に近い立地から、運送会社や倉庫会社などの物流拠点の開設も相次ぎ、人材の確保が難しくなった。そこで思い切って、最新設備を導入した高効率の物流センター建設に踏み切った。

歩かず、ポート前で待つだけ

 そこで導入したのがノルウェーのロボット倉庫システム「AutoStore(オートストア)」だ。オートストアは、専用コンテナを高密度に収納した保管棚と、棚の上にある「グリッド」と呼ばれるアルミ製のレール上を車輪がついた自走式の箱型ロボットが走り回り、指定された商品を上からつり上げて出し入れする、ロボット倉庫型のピッキングシステムだ。

 従来の物流センターでのピッキング作業は、商品が並んだ棚の間を、作業者が指示書やピッキングを指示する小型端末を手に歩き、自分の目と手で商品を取り出す。歩行距離は1日で、繁忙期には10kmにも達するという。

  • 作業スペースの頭上にロボット倉庫がある

  • 作業者が待つポートに商品が運ばれてくる

 オートストアを導入したロボット倉庫では、作業者はロボットがピッキングしたコンテナを、ポートと呼ぶ入出庫口の前で待つだけでいい。ポート横に設置されたパソコン画面に表示される数だけ商品を取り出し、別のコンテナに入れた段ボール箱に移すだけ。残りの商品をポートに戻せば、自動で商品は保管場所に戻される。

 作業者はポートの前で待っていれば、指示書通りに商品が運ばれ、集まり、段ボール箱入りのコンテナを目の前のローラーコンベヤーに乗せるだけで、次の検品工程に進む。作業者はポートの前から移動する必要もなくピッキング作業をこなせる。検品作業が終われば段ボール箱を閉じ、宅配便で出荷する。

  • 集まった商品を左の青いコンテナに移し、目の前のローラーコンベヤーへ

  • コンベヤーの向かう先は次の検品工程

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