自動化の第一歩を! 軸数絞って扱いやすく【後編】/ブラザー工業、田中工画
加工が難しいワークを得意に
源頼朝が源氏再興の祈願をしたこと知られる三嶋大社。
その最寄り駅の三島駅から車で北東に15分ほど移動すると工業団地があり、その一角に今回訪ねた田中工画が本社を構える。
自動車のアルミダイカスト部品の切削加工が事業の柱で、ブラザー工業の小型マシニングセンタ(MC)をはじめ数値制御(NC)旋盤など24台の工作機械を保有する。アルミダイカストとは溶かしたアルミを金型に流し込み、圧力をかけて成形する鋳造法の一種だ。
田中工画が加工するのは、自動車のギアケースやリヤカバー、センターブラケット、モーターケースなど多岐にわたる。自動車部品だけではなく、一部では工作機械や産業用設備向けのアルミダイカスト部品の加工も担う。
単純なブロック形状や円筒形状のワーク(被加工物)ではなく、加工が難しい異形物のワークの加工を得意とする。田中社長は「単純形状の加工はどこでもできるため、価格競争になりがち。だからこそ、競合他社が敬遠するような異形物のワークを積極的に受注し、会社の技術力を高めている」と語る。
MCと同じ設計思想
同社は、板状やブロック状のワークの加工に向くMCを全てブラザー工業製の小型機で統一した。
いわゆるブラザー工業の「ヘビーユーザー」に当たる田中工画は、昨年2月に小型MC「S500X2」とBV7-870、ワークを置くストッカーなどで構成された自動化システムを導入。ストッカーに並べられた42個のワークをBV7-870がつかんでS500X2に供給し、加工後のワークを洗浄槽に入れて別のストッカーに戻す一連の作業工程を自動化した。
42個のワークを加工し終えるのにかかる時間は約1時間。従来はオペレーターが工作機械に付きっ切りでワークの脱着作業をする必要があったが、BV7-870を導入したことで1時間おきにストッカーを交換するだけで済むようになった。空いた時間を他の作業に充てられ、生産性の向上につながった。
前編でも紹介した通り、BV7-870の特徴は扱いやすさにある。外部のシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)に頼ることなく、ユーザー自身でも簡単にティーチング(動作を覚えさせること)などができるよう、機能をワークの脱着に特化して軸数も4軸に抑えた。
同社では生産性のさらなる向上を目指し、導入後の1年間でジグ(ワークを固定する補助器具)の形状や洗浄方法、エアブロー方法などを見直したという。工作機械のテーブルに据え付けられるジグの形状が変われば、BV7-870がワークを供給する位置も変わるため、再度ティーチングをしなければならない。ブラザー工業のサポートも受けながら、田中社長と専任のオペレーターの2人が中心となって、システムを改善するたびにティーチングを実施した。
田中社長は「ブラザー工業製のMCの取り扱いには慣れているが、垂直多関節型のローディングシステムを導入したのは今回が初めてで不安もあった。しかし、日頃使い慣れたMCと基本的な設計思想が近く、わが社としては扱いやすかった」と導入後の感想を語る。