デンソーとベッコフが共同提案、新方式のロボットコントローラー
ソフトとIPCを別に
ロボットメーカーのデンソーウェーブとドイツの制御機器メーカーのベッコフが、昨年12月13日に新しいロボットコントローラーを発表した。
名前は「RC9」。これまではドライバーと一体化したコントローラーをロボットメーカーが専用設計するのが普通だった。しかし、RC9はベッコフの“汎用的”な産業用パソコン(IPC)にデンソーウェーブが開発したソフトをインストールしてロボットを制御する。
高機能なものからエントリーモデルまで、用途に応じて好きなIPCを選択できるのが最大の特徴だ。また、ロボット単体だけでなく複数の設備の統合制御も可能となる。今年7月に発売する新型の産業用ロボット「VMシリーズ」「VLシリーズ」から採用される。
「ロボット開発ではオープン性を意識してきた。これからもベッコフと連携して強化していきたい」とデンソーウェーブの中川弘靖社長は話す。
専用設計の意味とは?
ハードウエアを専用設計する意味は一体何なのか? 今回のコラボレーションは、製造業にとって普遍的なこの命題に一石を投じるものと言えるだろう。
一般にロボットコントローラーは、データの処理速度や信頼性を担保するために専用設計せざるをえなかった。ロボットメーカーは専用設計をしたくてしているのではなく、「せざるをえない」状況だったわけだ。
しかし、ベッコフが開発した拡張性が高く、リアルタイムで制御を実行できるプラットフォーム「TwinCAT(ツインキャット)」をベッコフのIPC上で利用すれば、それらの課題は解消される。これにより、デンソーウェーブはロボットを制御する専用ソフトの開発に経営資源を集中できる。
結果、ユーザーはコントローラーの筐(きょう)体に依存しない、自由度の高いシステムを構築できるわけだ。
今後はFA業界のさまざまな分野でも、こうした分業や協業が一般化していくだろう。
ベッコフオートメーション ゲルド・ホッペ副社長インタビュー
拡張性と汎用性高いTwinCAT
「レベルの高い日本のロボットメーカーに選ばれたことを誇りに思います。ロボットの制御システムの開発には大量の資金と時間が必要ですが、今回のパートナーシップの締結は、デンソーウェーブの『いかに開発生産性を高めるか』との冷静な判断に基づくものでしょう。わが社の汎用的なIPCとツインキャットを採用することで、彼らはロボットを制御するソフトの開発に集中できるからです。ツインキャットは拡張性と汎用性が高いので是非とも日本の生産財メーカーにも使ってもらいたいですね」
――終わり
(ロボットダイジェスト編集長 八角秀)
※本記事の再編集版は設備材の専門誌「月刊生産財マーケティング」2020年3月号でもお読みいただけます。