[SI基礎講座vol.7] 生産技術概論⑤
着手から完了までに日数または時間
ここでは、リードタイムについて説明します。リードタイムには、開発のリードタイム、調達のリードタイム、生産のリードタイム、配送のリードタイムなどさまざまあります。
右の図は、工場に注文が入ってからの流れを示したものです。「半導体パニック」と言われた半導体不足の時期などは、調達リードタイムだけで1年を超えるなど、見通しが立たない時期もありました。ボトルネックになる部品をどうするかは、各社いろいろと考えていると思います。
いろいろな部品を使っている製品では、調達で3カ月ぐらいかかることが多いです。私が以前いたパソコンメーカーでも、半導体から機構部品まで全部合わせると長いものでは調達に3カ月かかることがあり、標準で3カ月の調達リードタイムを設けていました。サイクルが決まってくれば、事前に発注をかけることもでき、購買部門はこうしたことを日々考えていると思います。
製造リードタイムは、製造着手から完了までの期間です。今日着手して明日に完了するのなら理想的ですが、なかなかそうはいきません。今日着手した場合に3日後には必ず完了するのなら、それを計算に入れていろいろと考えることができます。
各工程の作業時間の合計と製造リードタイムに大きな差がある場合は、それだけ滞留していると言えます。滞留は減らすべき無駄の一つです。
自動化やロボット導入を考える場合、できるだけ夜も動かしたいと考えますよね。夜間にロボットが作業して、人はその前後工程の作業をする。その場合、リードタイムの考え方は非常に重要になります。できるだけ滞留をなくすような工程設計を考える必要があります。
リードタイムをどう短縮するか
製造リードタイム短縮に向けた取り組みについて説明します。
滞留時間を減らす方法としては、段取り時間の短縮などが挙げられます。生産する製品を切り替える際に段取り替えをしますが、最近では外段取りが一般的です。別工程で段取りの準備をしておいて、一気に変えてしまうことです。
その他、工程間の滞留を防止する工程別作業計画の展開などもあります。生産技術概論②で説明した工程バランスを高めましょう。
滞留化を防ぐには、小ロット化も効果的です。また、1個作りのようなセル生産も滞留は防ぎやすいです。在庫を削減したり、工程を結合することも有効です。
次に、非付加価値作業の圧縮について説明すると、外段取り化はここにもつながってきます。
物流導線の短縮や歩留まり向上、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)推進などもあるでしょう。
最後に生産能力の向上では、工場自動化(FA化)の推進や、多能化、作業標準化などが挙げられます。
私がこれまで企業にアドバイスした経験からお話しすると、製造リードタイムの短縮を考える場合、工程全体を見るとボトルネックになる工程があると思います。設備が問題なら台数を増やすなど手の打ちようはあります。まずはボトルネック工程がボトルネックになっていると認識してもらうことが重要です。
――次回は「生産技術概論⑥」です
(構成・ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)
※この記事は2023年9月12日~14日に日本ロボットシステムインテグレータ協会が主催した「ロボットSI基礎講座」を誌上講座として収録したものです。「ロボットSI基礎講座」の詳細情報の確認や申し込みは、同協会の公式ウェブサイト内「ロボットSI基礎講座」のページから。
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