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2024.06.21

連載

「吸着ハンドは難しい」。だからこそ、部品メーカーの次の一手/日本ピスコ

「吸着ハンドは難しい」

昨年の「2023国際ロボット展」でも、設計サービスをアピール

 同社は、エジェクターや継手、真空パッドなどを手掛ける部品メーカーだ。そういった部品の、いわゆる「単品売り」を得意にしてきた。設計サービスは新たな取り組みとなる。

 小宮係長は「人手不足などから、産業用ロボットの市場が広がる中で、ユーザーは真空パッドなどの部品単体が欲しいのでなく、ワークを持ち上げて指定した位置まで運ぶなどの課題解決を求めている。システムを構築するシステムインテグレーターも案件を多く抱えていて、ハンドの作り込みまで手が回らない例も増えている。そこでハンドの設計を始めた」と意図を語る。

 特に吸着ハンドを使った搬送は、ワークの重心の見極めや適切な真空パッドの選定、配置などが難しい。バランスを崩すと、最悪の場合にワークを落下させる危険性もある。そこで、同社のノウハウを生かしながら最適な設計をするサービスを始めた。
 開始以前も、部品をどのように使えば適切な把持ができるかなどの構想を練って、SIerやエンドユーザーを助言などで支援する活動をしていた。
 実際に設計して製作するのは、そこから一歩踏み込んだ形だ。

要望次第で、標準品にも

小宮裕係長(=右)と有賀拓真主査

 設計サービスを始めてから、同社の営業スタイルにも変化があったという。
 今までは単品製品の提案が中心だった。設計サービスを始めてからは、具体的なソリューションとしてどのように形にするか、営業スタッフも顧客と考えて課題を明確にしながら同チームに依頼をしてくるようになった。

 製品開発を担う技術本部開発部開発三課の有賀拓真主査は「営業スタッフが具体的な提案をすることで、顧客のニーズも具体的に聞けるようになった。設計開発にも生かしやすい」と喜ぶ。
 小宮係長も「このような社内の変化はうれしい。設計サービスが、社内でうまく回り始めつつある」と手応えを口にする。

 設計サービスを通じて製作したハンドは、顧客との相談次第だが、同社の製品として標準化する計画もある。「段ボール組立真空グリッパ」もその対象の一つだ。
 個別設計を前提にしたサービスだが、依頼元も横展開して複数使いたい場合もある。その場合は日本ピスコ側も調達部品をまとめて購入し、内製部品も量産することで、生産コストを下げられる。結果的に顧客への納入価格も下がる。さらに、日本ピスコの標準製品になれば、より価格が下げられる。

 小宮係長は「特定の顧客が困っている課題は、他社も困っている。当然、顧客も自社だけのものにしたいハンドもあるだろうが、反対にコストを下げたいものもあるはず。そのバランスを見ながら適切に提案して、相談した上で標準化できるものは製品としてラインアップしていきたい」と話す。

(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)

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