世界最大規模の見本市! 最先端の自動化技術とは?/ハノーバーメッセ2019【後編】
スカラも直交も、そして垂直多関節も
ハノーバーメッセ2019では、デジタル化技術などを駆使して生産性を飛躍的に高める次世代型の工場「スマートファクトリー」向けの最新技術や製品の展示が目立った。スマートファクトリーは、開催地のドイツが政府主導で提唱する戦略的プロジェクト「インダストリー4.0」のコンセプトを具体化したものだ。
前編では、特に注目を集めたものとして協働ロボットを取り上げたが、もちろん通常の多関節ロボットを使った自動化提案も活発だった。
スカラロボットを得意とするヤマハ発動機は、自社製の天つりタイプのスカラロボット2台とリニアモーター駆動の直交ロボット「LCM」を組み合わせ、スピーカーの組み立て作業を自動化するシステムを展示した。スピーカーの形状の認識に使ったビジョンセンサー「iVY2」も自社製だ。
ヤマハ発動機は、楽器製造で有名なヤマハから独立した企業。それだけに、音楽にちなんだ製品の組み立てを自動化するデモを披露し、来場者の関心を引いた。
このシステムの最大の特徴は、スカラロボットも搬送システムも同一のコントローラーで制御している点。担当者は「スカラロボットも直交ロボットも、そして垂直多関節ロボットもラインアップする企業は少ない。自社製品だからこそ、スカラロボットと直交ロボットを1台のコントローラーで制御できる」と強調する。
低コストで導入できる
「ロボットの素材は何か?」と聞かれたら、普通は「金属」と回答することが多いだろう。
では、もし「樹脂製」のロボットがあったら――?
ドイツの樹脂部品メーカー、イグスは「ローコストロボティクス」をコンセプトに、樹脂製のロボット「robolink(ロボリンク)」を提案した。
ロボリンクはロボットアームだけではなく、関節部分に搭載される歯車も樹脂でできている。多くの部品が樹脂製なので、金属製のロボットと同じようにロボリンクを使うのは難しい。しかし、樹脂製ゆえにロボリンクは導入コストが低く、「ちょっとした作業を自動化したい」と考える中小企業などには最適だ。
会場では、2018年に発売した「ロボリンクDC」と、今年発売予定の「ロボリンクDP」の2種類を展示した。ユーロの価格も表示し、価格優位性をアピールした。
この他、新提案として協働タイプのサービスロボットの試作機も参考出展した。ハノーバーメッセ2019の初日にはドイルのアンゲラ・メルケル首相もイグスの小間に来場。サービスロボットを直に触れ、関心を示した。
イグスではロボット本体は製造するものの、制御装置は作らない。ロボリンクを使った自動化システムを構築するには、ロボット本体とハンドなどの周辺機器に加え、制御装置も別途必要だ。
これまでロボットを使ったことがない中小企業では「何のロボットを使うか」「どんな周辺機器を使うか」「制御装置は何が必要か」を自社で判断することが非常に難しい。システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)に依頼するにしても、システムの設計から構築に至るまでに大きな手間がかかる。
そこで、イグスはハノーバーメッセ2019の開幕に合わせ、中小企業のロボット導入を支援するウェブサービス「RBTX」を開始した。
RBTXでは顧客が自社のニーズに合わせ、ロボット本体に加えてハンドやビジョンセンサーなどの周辺機器、制御機器をウェブ上で自由に選定できる。ロボット本体は、イグスのロボリンクの中から最適なものを選べる。