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2019.11.12

インタビュー

結果にコミット? ロボットのスリム化に貢献できたワケ【前編】/ナブテスコ

ロボットがなぜスムーズに動き、正確に作業をこなせるのか? ロボットを動かすソフトウエアが賢いのはもちろんだが、それだけではない。例えばロボット本体がぐらついていたら正しい場所でアームが止まらず、先に取り付けたロボットハンドに作業などさせられない。ロボット本体とアーム、ロボットハンドのそれぞれが、決められた通りの位置でぴたりと止まらなくては、肝心な作業が始められない。各部分を実際に動かすのはモーターだが、重要なカギを握るのはモーターに取り付けられた減速機なのだ。中・大型の産業用ロボットの関節に使われる精密減速機で、世界シェアの6割を占めるナブテスコの精密減速機「RVシリーズ」。この製品を製造する津工場に向かい、精機カンパニーで開発部長を務める森弘樹理事に精密減速機の肝について聞いた。

減速機って何ですか?

――そもそも減速機とは何ですか?

 一番わかりやすいのが自転車や自動車の変速ギアです。自転車で坂道をペダルでこいで上るのは平地よりきついですよね。軽いギアに変えて、たくさん回すけれども軽い状態にすれば、坂道でも上りやすくなります。

「減速機の一番わかりやすい例えが自転車や自動車の変速ギアです」(森弘樹理事)

――なるほど、減速機が何かは分かりました。ではなぜ産業用ロボットに、減速機が必要なのですか?

 ロボットの各関節には、サーボモーターと減速機が付いています。モーターの力だけでロボットの各関節を動かすには、非常に大きなモーターを搭載する必要があります。ロボット自体が大きくなって重くなれば、さらに大きなモーターが必要になる。しかし、関節に減速機を組み込めば、より小さなモーターで大きな力を出せるようになる。モーターと減速機を1つの駆動源として使えば、モーターだけを搭載するよりもロボット自体がコンパクトになり関節部分も制御しやすくなります。

ナブテスコの精密減速機「RVシリーズ」

――なるほど、減速機がなければ産業用ロボットは今よりももっと大きくてごつごつしていたと。今のようにロボットがスリムになったのは、減速機が一翼を担ったわけですね。

 そうですね。サーボモーターは、1分間に何千回転もします。モーターには一番効率よく最適な回転数で回してもらい、減速機で回転数を落として大きなパワーを生んでいます。

ナブテスコの強み

――ところで数ある減速機の中で、特に産業用ロボット向けの減速機で一番重要なのは何ですか? シェア6割を勝ち取った理由は?

 高精度、高剛性、高信頼性です。この3つの「高」をキーワードにしてアピールしています。この3つがそろうことでシェアを維持できていると自負しています。

――3つの「高」をもう少し詳しく解説してください。

 高精度とは、例えばロボットを使った溶接では、高精度で位置を決める必要があり、高い精度の減速機が求められます。それを実現するために、減速機を構成する歯車や軸受けなどの各部品を高精度に加工し、バックラッシ(歯の間の遊び)を最小にしています。

――高剛性とは?

 ロボットをより早く動かしたり、より重いものを持たせるには、ロボット自体が踏ん張れなくてはなりません。関節を動かすモーターは、最高速度から一瞬にしてゼロに止まります。アームも止まらなければ、次の動作に移れない。関節部分の減速機に剛性があって、力がかかっても変形しにくければ、振動を残さず次の動作に移れます。

  • ロボットの関節部分に減速機は使われる

――なるほど、改めて説明する必要はないかもしれませんが高信頼性とは?

 減速機そのものの信頼性です。減速機の不具合を理由にロボットが止まれば、製造ライン全体、工場全体を止めてしまいます。まずは減速機自体が「壊れない」こと。そのためには減速機自体が高品質でなければなりません。全部品、全製品でトレーサビリティー(追跡可能)管理を厳格にしています。産業用ロボット向けの減速機に求められるのはここです。これからのロボットにはどんな減速機が必要か。ロボット自体も常に進化しており、われわれ減速機メーカーもロボットメーカーと一緒に取り組んでいます。「われわれ自身もロボットの進化に貢献している」との自負や自信もあります。

――後編へ続く
(ロボットダイジェスト編集部 長谷川 仁)


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