[気鋭のロボット研究者vol.13]負圧を利用したシンプルなグリッパー【前編】/関西大学 高橋智一准教授
タコをまねてシンプルに
タコの吸盤は、外からも見えるろうと部と、奥に広がる吸盤部からなる。ろうと部をつかむ対象に密着させた後に、吸盤部の空間を広げて負の圧力を作り出して強い吸着力を生む。
高橋准教授が研究する真空吸着グリッパーは、まさにこのタコの吸盤を模した構造だ。筒状のグリッパー本体底面を薄膜にし、底面を対象物に密着させた状態で、真空ポンプで内部を減圧すると、薄膜部分がグリッパーの内部に引き込まれる。すると対象物と薄膜の隙間に強い負圧が発生し、吸い付ける原理だ。
高橋准教授は「この真空吸着グリッパーは、固いものも軟らかいものも、平面でも曲面でも幅広くつかめるのが強み」と話す。真空ポンプにつながる排気ホース以外に配線がなく取り回しやすい点、シンプルな構造で製作コストを抑えられ、メンテナンスが簡単な点も長所だ。固いものなら最大5kg、軟らかいものは最大1kg程度までつかめる。
実用レベルの性能を目指す
――後編に続く
(ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)
高橋智一(たかはし・ともかず)
2010年3月東北大学大学院工学研究科ナノメカニクス専攻博士課程後期修了、4月関西大学システム理工学部機械工学科助教。15年准教授。16年第5回ネイチャー・インダストリー・アワード技術開発委員会賞受賞。20年精密工学会論文賞受賞。1982年生まれの37歳。兵庫県出身。
関連記事:[気鋭のロボット研究者vol.13]関西大学 高橋智一准教授【後編】(7月下旬に公開予定)