[活躍するロボジョvol.2]相手に分かりやすく伝える/三菱電機 坂川智恵子さん
ロボットの試作品を検証
ロボット製造部開発第一課に所属する入社5年目の坂川さんは、ロボットアームの筐(きょう)体や駆動部の設計を担当する。
ロボット部品のメーカーから「既存の部品からこの部品に変更したらコストが安くなるのでは」との提案を受けることも多く、ロボットの性能に影響が出ないかを設計担当として検証するのも主な業務の一つだ。
昨年には、中国市場を皮切りに全世界へ発売した6軸の垂直多関節ロボット「MELFA(メルファ)RV-8CRL」の動作検証業務を担当した。
「製造現場の人手不足に悩む企業に気軽に導入してほしいという思いで、従来機種よりも低価格を実現し、さらに、軽量化や保守の容易さなどの実用性も兼ね備えたロボット。従来は人手でこなしていた単純作業を自動化でき、空いた人や時間を他の仕事に充てられる」と話す。最大可搬質量は8kgで、主な用途は部品のハンドリングなど。製造や物流の現場で広く採用されている。
坂川さんは試作品を実際に動かし、最大速度や電流値などの各種仕様が設計図通りかを確認し、試作品を動作検証する作業に携わった。
設計の主担当者がその報告を基に試作品を作り直す。坂川さんがその試作品を再度検証する――。このサイクルが3カ月間にもわたって繰り返された。そして、品質保証や量産の工程を経て、RV-8CRLが満を持して全世界で発売された。
試作品の動きを実際に見て検証したのは彼女だけで、大きな責任があった。「自分の目で直接確認した問題点を、設計の主担当者に分かりやすく正確に伝えるのに一番苦労した」と振り返る。
3カ月間の開発品の検証業務を通じ、コミュニケーションの重要性を改めて学んだ。通常業務でも「どうすれば相手に情報を正確に伝えられるか」を意識しながら、資料作成などにあたっている。
将来は海外で技術サポートも
「ゆくゆくは海外に出向いて技術サポートをしたい」と将来のキャリアプランを語る。「現地のお客さまからの、良い評価も厳しい評価も含めた生の声を聞き、製品の開発に生かしたい」と意気込む。
同社は働きやすい環境が整っており、社内には産前産後休業(産休)や育児休業から復帰して活躍する女性社員も多い。坂川さんも「出産などのライフイベントを経ても、会社に復帰してものづくりに携わりたい」と述べる。
休日の楽しみは、ボランティアで日本在住の外国人に日本語を教えること。「日本人同士ではあいまいな表現でもいいが、外国人には通じない。仕事と全く同じで、正確な表現で相手に伝えることを意識している」と話す。
(ロボットダイジェスト編集部 鷲見咲美)