自動化の第一歩を! 軸数絞って扱いやすく【前編】/ブラザー工業、田中工画
用途をワークの脱着だけに
ブラザー工業はプリンターやミシンで有名だが、金属パーツなどを切削加工する工作機械も手掛ける。現在は「SPEEDIO(スピーディオ)」のブランドで小型マシニングセンタ(MC)を開発、製造、販売する。MCとは、切削工具を自動で交換しながら多種類の加工を1台でこなす数値制御(NC)工作機械だ。
同社は19年5月、スピーディオ専用のオプションとしてローディングシステム「BV7-870」を発売した。最大可搬質量は7kgで、最大リーチ長が870mmの4軸の垂直多関節型のローディングシステムだ。加工前のワーク(被加工物)をスピーディオに供給し、加工後のワークを取り出す「ワークの脱着」の自動化を担う。適用機種は「S300X2」「S500X2」「M200X3」の3機種だ。
大きな特徴は扱いやすさにある。一般的な6軸の垂直多関節ロボットは自由度が高い分、ティーチング(動作を覚えさせること)が難しいが、BV7-870は用途をワークの脱着だけに絞り軸数も4軸に抑えた。「6軸ロボットのようにさまざまな作業を任せられるわけではないが、ユーザー自身で簡単にティーチングできて操作しやすいのが強み」とマシナリー事業産業機器営業部ソリューショングループの久田敏生マネジャーは話す。
また、工作機械と垂直多関節ロボットを組み合わせて自動化システムを構築する場合、設置スペースの問題や、ロボットを設置する架台やワークを置くストッカーの準備、電気配線やエア配管の接続、ティーチングなどの検討事項が数多くある。そのため、通常は外部のシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)に依頼し、自動化システムを構築する。
これに対し、BV7-870はあらかじめ自社工場でスピーディオと接続された状態で顧客に納入されるので、わずかなシステムインテグレーションで自動化を実現できる。同社は個別対応として、ストッカーや安全柵、ジグ(ワークを固定する加工補助具)制御、汎用ロボットハンドなども含めたパッケージ化も進めている。顧客側で手配するものも削減でき、簡単に自動化システムをセットアップできる。
BV7-870はスピーディオに最適な設計のためコンパクトで、設置スペースに限りがある中小企業でも導入しやすい。
久田マネジャーは「自動化に必要な機能をワンパッケージにまとめ、機械とセットで提供できるのがポイント。ティーチングも簡単なので、早ければ納品の翌日にでも稼働できる」と述べる。
BV7-870は7kg可搬の垂直多関節ロボットと価格を単純比較されることも多いが、本体価格には電気制御や架台、側面扉など必要な機能も含まれている。そのため、SIerに依頼しなくてもユーザー自身で自動化システムを簡単に稼働できるため、システム構築費を大幅に抑えられる。操作の難しさや導入コストの高さから自動化に二の足を踏んでいた中小企業などに、トータルでのコストメリットを打ち出す狙いだ。