[SIerを訪ねて vol.26]容器搬送の技術生かして新規取り込む/エヌテック
ミッションは「容器の動きを科学する」
日本の滝百選に入る「養老の滝」で有名な岐阜県養老町。その養老の滝から自動車で北に20分ほど進むと、「容器の動きを科学する」と描かれた工場がのどかな田園風景の中に見える。そこが今回訪問したエヌテックの本社工場だ。
同社は、ガラス瓶メーカーの日本耐酸壜(びん)工業(岐阜県大垣市、堤健社長)のエンジニアリング部が分離して1988年に設立された。「容器の動きを科学する」をミッションに掲げ、ペットボトルやガラス瓶、紙製容器などの搬送システムや検査装置を設計、製造、販売する。
主要な取引先には、ヤクルト本社やコカ・コーラボトラーズジャパン、アサヒ、キリン、サントリー、東洋製罐、石塚硝子、日本パリソンといった大手飲料メーカーや容器メーカーが名を連ねる。
各種容器の搬送システムや検査装置の製造で培った自動化の技術を生かし、最近は食品や医薬品、一般機械業界へのロボットシステムの提案にも力を注ぐ。営業部の山田英樹次長は「飲料業界や容器業界向けの搬送システムと検査装置だけで売上高全体の約4分の3を占める。リスク分散の観点からも、新規市場を対象としたロボットSIerの事業に本腰を入れ始めた」と説明する。
複数の工程を1人で
エヌテックはシステムの設計から製造、制御、アフターサービスまで自社で一貫して担い、搬送と検査の両方をワンストップで提案できるのが特徴だ。ファナックや安川電機、川崎重工業など幅広いメーカーのロボットを取り扱い、顧客の要望に柔軟に応える。
画像処理技術を開発する専門部署もあり、ライン上を高速で移動する容器を正確に認識する画像処理のアルゴリズム(計算方法)を内製できるという。
同社の強みの一つは人材にある。技術本部の大窪悟本部長は「ロボットのティーチング(動作を覚えさせること)、機械設備のシーケンス制御、画像処理関連の3つの技術を備えた人材が10人ほど在籍している。1人の技術者が複数の工程をこなせるため、通常は4人がかりで構築する搬送システムでも半分の2人だけで対応できる」と語る。
少人数でシステムを構築できれば人的コストは削減できるが、複数人で業務を分担した方が製造リードタイムは短縮できそうだ。しかし、大窪本部長は「実際にはティーチング、シーケンス制御、画像処理などが同時に進行するケースはほとんどない。そのため、専任担当が複数いても手待ちの時間が生まれるだけ」と話す。