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2023.08.18

インタビュー

[進化する物流vol.14]高密度だけじゃない! 「遅い」の誤解を払拭/オートストアシステム 安高真之社長

オートストアは、ロボット自動倉庫システム「AutoStore(オートストア)」を製造、販売するノルウェーのメーカーだ。今年5月、日本法人オートストアシステム(東京都中央区)の社長に安高真之氏が就任した。国内でも着々と導入数を伸ばす。本社を拡大移転し、人員を2022年時点の3倍に増やすなど国内でもさらなる受注拡大に向け体制を整える。「オートストアは空間を最大限有効に活用できるため『高密度』のイメージは強いが、反面『遅い』と誤解されることが多い。その認識を塗り替えたい」と安高社長は意気込む。

物流自動化の豊富な経験

今年5月に就任した安高真之社長

――今年5月にオートストアの日本法人の社長に就任されました。まずはこれまでの経歴を教えてください。
 これまではアマゾンジャパンやソフトバンクロボティクス、ヤフーなどで物流倉庫の自動化に携わってきました。もともとはIT系のエンジニアであり、倉庫管理システム(WMS)などソフトウエアをきっかけに物流に関わり始め、近年は物流事業の技術責任者や物流事業全体の総責任者としてさまざまな自動化プロジェクトを推進してきました。そのためオートストアのことは以前からよく知っています。

――ソフトバンクロボティクスはオートストアのグローバル販売代理店で、ソフトバンクグループはオートストアの出資者でもありますね。
 そうですね。それもあって「ソフトバンクグループから送り込まれたのか」とよく聞かれますが、そうではありません。これまで、物流ロボットのユーザーも代理店も経験してきましたが、今度はメーカー側として携わろうと思い、さまざまなタイミングが合致してご縁があってオートストアに入りました。

処理速度はロボットの台数で調整可能

保管スペースの上から四角いロボットがコンテナを出し入れする

――日本法人の社長として取り組むことは?
 まずは「オートストアは入出庫の処理速度が遅い」という誤解を解くことに最優先で取り組みます。オートストアのイメージといえば、まず思い浮かぶのが保管効率の高さです。通常の倉庫では棚と棚の間に通路がありますが、オートストアはロボットが上からビン(専用の保管用コンテナ)を出し入れする構造のため、通路なしで空間全体を保管スペースとして使え、保管効率に優れます。しかし高密度保管ができる反面、「遅い」とのイメージを持たれがちです。オートストアはコンテナを縦に積み上げており、下のコンテナを取り出す際、その上にあるコンテナを一つ一つどかす必要があるためこういった印象になるのでしょう。

――実際は遅くない?
 ロボットの台数を増やすことで、システム全体としてのスループット(処理量)は高められます。1台が下にあるコンテナを取り出している間に、他のロボットで別商品のピッキングを進めればいいのです。ロボットの数も、商品を取り出すポートの数も、コンテナの数も自在に調整でき、現場のニーズに合わせた保管量や入出庫の処理量などを実現できます。

保管スペースの形状もロボットや取り出しポートの数も自在に調整できる

――なるほど。
 以前はソフトウエアの問題で、ロボットの台数を増やしすぎると走行ルートの割り当てが困難になり、効率的に稼働させられないこともありました。しかし、2020年に新たな制御ソフト「ラウター」を開発してからは、こうした心配はありません。以前の倍の密度でロボットを配置しても効率的に動かせます。大規模なシステムなら1日で46万ものオーダーを処理することも可能です。そこまで大規模なシステムはなかなかありませんが、欧米では1時間に1万オーダー以上を処理するシステムが増えています。

――そのことをどうやって周知しますか。
 9月13日~15日に都内で開かれる物流専門展「国際物流総合展イノベーションエキスポ」では「スピード&ネクスト」をテーマに、処理速度の高さをアピールしたいと考えています。また処理速度だけでなく、膨大な稼働データを解析して稼働率の向上などにつなげるオプション機能「Unify Analytics(ユニファイアナリティクス)」なども紹介予定です。

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