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2024.06.06

インタビュー

差別化の鍵は素材にあり/コンバム 佐藤穣社長 インタビュー

今年3月、コンバムの開発担当役員だった佐藤穣(さとう・ゆたか)氏が社長に就任した。伊勢幸治前社長の逝去に伴う就任だが、「前社長の病気療養中からその業務を代行していたため、社内外ともそれほど混乱なく引き継げた」と佐藤社長は言う。「ロボットの真空ハンドにはまだまだ開発の余地がある」と話し、素材から研究して他社との差別化を図る。

求められるのは「何でもつかめるハンド」

3月に社長に就任した佐藤穣社長

――3月22日の株主総会で社長に就任されました。伊勢幸治前社長の逝去に伴う社長就任でしたが、混乱などはありませんでしたか?
 前社長は病気療養でしばらく業務を離れており、その間は私が他の役員と連携しながら社長の代理としてさまざまな判断や決済をしていました。そのため、社内外とも大きな混乱はなく社長を引き継げました。株主総会も、入院中の社長に報告しながらわれわれで準備を進めていましたので、その直前での他界となりましたが滞りなく開催できました。

――新社長としての方針を教えてください。
 開発に力を入れ、他社と差別化を図る、これが重要だと考えています。真空機器業界にはグローバルに展開する大企業もありますが、それらと比べるとわが社の規模は大きくありません。付加価値の低い安価な製品を大量に販売することは考えておらず、われわれは「コンバムにしかできないこと」を追求し、ブランドをしっかりと確立しなければいけません。小回りが利く特徴を生かし、顧客のニーズにきめ細かく対応するため、新たな製品や技術を常に研究し、製品開発へつなげていきます。

――開発の方向性は?
 少子高齢化で、今後の産業界は「ロボットに頼ることが必然」になっていくでしょう。当然、通常の産業用ロボットも多く使われますが、協働ロボットも増えていきます。システムを作り込んで高い生産性を確保する通常の産業用ロボットと違い、協働ロボットのシステムではより高い汎用性が求められます。その時ハンドにはどういった性質が求められるのか。それは「一つのハンドで何でもつかめること」だと思います。

ワークに合わせて変形するバルーンハンド(上)とペットボトルのシュリンクパックも把持できるSGP-H2

――何でもつかめるハンドですか?
 例えば、既に発売している製品ではバルーンハンドがあります。搬送対象物(ワーク)に接触する部分がバルーン状のゴム膜になっており、触れたものの形状に合わせて柔軟に変形します。そのため、一つのハンドで多種多様な物を扱え、不定形物や、吸着しやすい平面がない物なども吸着できます。

――なるほど。他にもありますか?

 昨年7月に発売した袋物吸着用パレッチャー「SGP-H2」も、1台で多様な袋に対応できます。変形しやすい充てん率の低い袋を吸い着けて搬送するのは難易度が高いのですが、SGP-H2ならしっかりと吸着できます。ワークに触れる部分がスポンジ状で、ワークに凹凸があってもその形状に合わせて吸着できます。紙製の米袋や、フィルムで包装したシュリンクパックのペットボトルなども搬送できます。20kg~30kgある袋の搬送に最適です。

RTJ2024でもPR予定のSGRシリーズ

――重量のある袋物の搬送向けですね。
 同様のコンセプトで小型化を図った「SGRシリーズ」もまもなく発売予定です。展示会に出したところ好評で、プロトタイプの段階で「発売されたらすぐに購入する」との声もいただきました。7月4日から愛知県で開催される「ロボットテクノロジージャパン(RTJ)2024」でも、この製品を目玉として展示します。

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