人手不足に直面! 米国製造業で「自動化は必須」に【後編】/IMTS2024
主催者もロボットに着目
IMTSは工作機械が主役の展示会だが、産業用ロボットメーカーも出展し、工作機械に負けずに多くの来場者を集めた。日本のロボットメーカーであっても現地法人や現地のシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)が構築したシステムもあり、日本では展示されたことのないデモシステムを多数披露した。
IMTSの来場者層に合わせ、工作機械に加工対象物(ワーク)をセットするマシンテンディングの展示が多かったが、協働ロボットを使った溶接システムも目立った。「米国では溶接は協働ロボットの主要なアプリケーション(用途)の一つで、以前から活発に提案されている」(日系ロボットメーカー幹部)。
出展者や来場者だけでなく、主催者もロボットに着目。IMTSを主催するAMT(米国製造技術協会)による展示ゾーン「エマージングテクノロジー(先端技術)センター」では、テキサス大学オースティン校からスピンアウトしたベンチャー企業Apptronik(アプトロニック)のヒト型ロボット「Apollo(アポロ)」が展示された。
アポロは工場や物流センターで働くことを想定して開発された産業用のヒト型ロボットだ。同社は今年3月にドイツの自動車メーカーのメルセデス・ベンツと提携し、工場での試験運用などが進められている。IMTSの会場では複雑な作業は行わなかったが、工業部品をつかみ上げて箱に入れるなどし、産業向けであることをアピールした。
協働ロボットがより身近に
ロボットメーカーで特に大きなブースを構えたのがファナックだ。同社は工作機械やその制御装置のメーカーでもあるが、ロボットの展示に最も力を入れた。
山口賢治社長兼最高経営責任者は「われわれはかつて経験したことのない自動化要求の高まりの中にいる。社会を維持し、より良くしていくために自動化がますます重要になっていると感じている。今回展では初めてでも簡単に使える協働ロボット『CRXシリーズ』に注目してほしい」と述べ、「CRXシリーズ」を使ったシステムを多数披露した。
必要な周辺機器や架台などをパッケージ化した導入しやすいシステムが多く、画像認識による組み立て検査システムや溶接システム、古い工作機械も自動化できるマシンテンディングシステムなどを展示した。
工作機械へのワークの投入から加工後の寸法測定、洗浄、刻印などの一連の工程を3台の協働ロボットと1台の自律移動型搬送ロボット(AMR)で自動化するデモシステムも構築。その前では多くの来場者が足を止め、各設備が連携する動きに見入った。
また同社は米国で高いシェアを持つため、同社ブース以外でもファナック製ロボットを見る機会は多かった。
米国のリシンク・ロボティクス(Rethink Robotics)は会場で、協働ロボット「Rethink Reacher(リシンク・リーチャー)」を発表した。最大可搬質量7kg~30kgの7機種をそろえ、マシンテンディングやパレタイズ(荷役台への積み付け)などさまざまな用途に使える。同社は教育・研究機関でよく使われる「Baxter(バクスター)」や「Sawyer(ソーヤー)」で知られた協働ロボットの先駆的企業の一つだったが、2018年に経営危機に陥り、独HAHNグループに買収された。今回展で「リシンク・リーチャー」やAMRを発表し、今後は産業向けで本格的な再始動を図る。
その他、ヒト型ロボットなども製造する韓国のレインボーロボティクス(RainbowRobotics)や、同じく韓国のHanwha(ハンファ)グループのハンファロボティクスなども協働ロボットをPRした。