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2020.05.07

担当者は全社員の2割強、「サービスファースト」掲げる意味/ファナック 山口賢治 社長兼CEO

AIや動画も活用

「マニュアルでのAI活用やeラーニングにも取り組む」と山口賢治社長兼CEO

――それは便利ですね。
 他には、人工知能(AI)を使ったマニュアル検索もあります。たくさんあるマニュアルの中から、探したい内容をAIに高速検索させるので、経験が浅いサービス担当者でも目的のページを素早く探し出せますし、現場に大量のマニュアルを持ち込む必要がなくなります。また、ビジュアルガイダンスも可能です。機械図、写真、動画などを組み合わせ、サービスのノウハウや作業手順を簡単にアニメーションにできます。携帯端末を利用すれば、実際に機械の前で手順を確認しながら作業できます。

――なるほど。
 サービス担当者は、パソコンや携帯端末を使って、空いている時間にCNC、ロボット、ロボマシンの操作や保守方法も学べます。いわゆるeラーニングですね。もちろん、実際の保守対応時にも動画を見ながら現場で確認をしながら作業ができます。

驚きのサービス体制

自社イベントでもサービスファーストをアピール(写真は2019年4月の「新商品発表展示会」)

――かなり具体的な話なので、御社がサービスを重視している姿勢が分かります。
 わが社は「サービスファースト」を社是に掲げ、グローバルサービス会議を毎年7月に開催しています。他に開発とセールスのグローバル会議があるのですが、サービスもそれと同じ重要な位置付けです。サービスをここまで重視するメーカーは少ないかもしれません。

――サービス担当者はどのくらいの陣容なのですか。
 中国の合弁会社も含めると、ざっくりと世界全体で9000人の社員中、約2000人がサービス担当です。

――2000人ですか。すごい比率です。
 実は私も最初に聞いたときは驚きました。現場での保守作業は、相応の費用をいただくのですが、かなり人件費などもかかりますので、ほとんど利益は出せません。しかし、ここを手薄にすると開発やセールスへのフィードバックもうまくいかなくなります。

――サービスは顧客の要望をフィードバックする起点という訳ですね。
 新機種を開発するとき、設計と生産技術と製造が入るのが普通ですが、わが社はそこに必ずサービスの人間も入ります。「交換しやすくしてほしい」「その設計ではメンテナンスしにくい」「それだと不具合が出やすい」といった、サービスならではの視点を開発に反映させます。リリース後にもサービスの意見をフィードバックさせて、設計を改良することもあります。

(聞き手・ロボットダイジェスト編集長 八角秀)

山口賢治(やまぐち・けんじ)
1993年東京大学大学院修士課程修了、ファナック入社。2003年MT本部長、07年本社工場長、08年工場総統括、専務、12年副社長、16年社長兼最高執行責任者(COO)、FA事業本部長、19年4月から現職。福島県出身。1968年生まれの51歳。

※この記事の再編集版は、設備財や工場自動化(ファクトリーオートメーション=FA)の専門誌「月刊生産財マーケティング」2020年5月号でもお読みいただけます。

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