相手は常に顧客であり市場/安川電機 小川昌寛社長
顧客や市場ニーズを開発の起点に
――社長としてやりたいことは。
「技術立社」という言葉をうたうように技術力が強みですが、モノからコトの改革は起きないのが鉄則です。いくら製品ポートフォリオを充実させても、そこに並べた「モノ」が市場という「コト」を動かせるわけではないんです。ですから、顧客市場で求められているコトの狙いが何なのかを見極めて、そこで必要とされる適切なモノを開発し、提供するしかありません。開発の志向を顧客や市場ありきに転換させるため、デジタル経営のプラットフォームであるYDX(安川デジタルトランスフォーメーション)や、開発推進のインフラである安川テクノロジーセンタといった、進化のきっかけを小笠原浩会長らが築いてきました。これからはそれらをどう生かすかが課題です。
――カーボンニュートラル(炭素中立)に関するニーズが強まっています。
変化に対応するには、まず動き出して情報を集めるのが重要。人の営みが人に害をなす循環を、技術によってどこかで断ち切らなければなりません。自動化や省人化は、循環を変える大きなすべになると思っています。
――ティーチングなしで動くモートマンネクストが興味深いですね。
ティーチングプレーバックからの脱却はロボットメーカーとしての悲願で、顧客の要望としても圧倒的に多い。ペンダントがタブレットに変わるなどの変化はありますが、原理そのものは変わっていません。23年度に発売予定の「モートマンネクスト」はその常識を覆します。ドローンの自律運用など進化したリモート技術が日常生活を支えるエコシステムになると思われるように、人手不足の現場を支えるエコシステムになるでしょう。
経験に勝る学びなし
おがわ・まさひろ
1987年九州芸術工科大学(現九州大学)工学部卒業、安川電機製作所(現安川電機)入社。2004年ロボティクスオートメーション事業企画部長、06年ロボット事業部ロボット工場開発部長、07年新規ロボット事業推進部長、09年新規ロボット事業統括部長、10年ロボット技術部長。10年米国安川米州統括。12年執行役員、16年ロボット事業部長、19年取締役、20年常務、22年代表取締役専務。23年3月より現職。1964年生まれの58歳。