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2020.08.04

[5日間の夏期集中講座vol.2]ここだけは押さえたい!産業用ロボットのきほんの「き」/ロボットの市場

産業用ロボットのさまざまな情報を発信するウェブマガジン「ロボットダイジェスト(ロボダイ)」では今回、「夏期集中講座」と題して押さえておくべき基本的なポイントを5日間にわたって解説する。2日日は産業用ロボットの市場規模を取り上げる。日本は実は「ロボット大国」だった――?

産業ロボットの市場は右肩上がりで拡大

出所:国際ロボット連盟「ワールド・ロボティクス・リポート2019」

 初日はロボットの定義などに触れながら、「産業用ロボットとは何か?」という根本的な内容を詳しく解説した。では、産業用途で使われる産業用ロボットの市場規模はどれぐらいあるのか?
 産業用ロボット関係では、ドイツに本部を置く国際ロボット連盟(IFR)と、日本の業界団体である日本ロボット工業会(JARA)が発表する統計資料が参考になる。

 IFRは2019年9月、世界のロボット市場を調査した「World Robotics Report(ワールド・ロボティクス・リポート)」の概要を公表した。
 右のグラフは13年から22年までの10年間のロボットの新規設置台数の推移をまとめたもの。20年以降は予測値にはなるが、おおむね右肩上がりで増加しているのが分かる。18年の出荷台数は42万2000台で、前年比6%の増加となった。

 つまり、産業用ロボットの需要は急速に伸びており、今後も大きな伸びが期待できそうだ。
 それは一体なぜか。答えは単純で、世界中で人手が不足しているから。足りない人手を産業用ロボットで補う動きが世界中で活発化しており、それが統計の数字にも反映されている。

 最大のロボット需要国は中国で、同調査によると18年には15万4000台のロボットが新設された。次点で日本、韓国、米国、ドイツと続く。
 日本は世界2位のロボット需要国だ。18年は約5万5000台のロボットが新設された。一般的にはあまり知られていないが、日本は産業用ロボット業界では需給両面においてかなり大きな存在感を放っている。18年の世界全体のロボット出荷台数のうち、日本からの出荷は52%を占めた。

日本は「ロボット大国」

出所:日本ロボット工業会「年間統計」を基に編集部作成

 この業界ではドイツのKUKAやスイスのABB、日本のファナック安川電機の4社を「世界4大メーカー」と呼ぶが、そのうちの2社は日本の企業だ。
 ファナックと安川電機の他にも、川崎重工業や三菱電機、セイコーエプソン、デンソーウェーブ(愛知県阿久比町、中川弘靖社長)、ヤマハ発動機、パナソニック、ダイヘン、不二越、芝浦機械(旧東芝機械)などの有力なロボットメーカーが多く、日本は「ロボット大国」と言っても過言ではない。

 日本の産業用ロボット市場を知りたい場合は、JARAの統計が参考になる。JARAは20年6月18日、19年の産業用ロボットの受注額、生産額、出荷実績(いずれも会員・非会員合計)を公表した。

 右のグラフを見ると、13年以降右肩上がりで上昇しているのが分かる。
 しかし、19年の受注額は前年比16.2%減の8064億円、生産額は同15.1%減の7743億円、総出荷額は同14.4%減の7985億円と減少に転じた。総出荷台数は同18.8%減の19万6488台だった。
 米国との貿易摩擦問題の影響などを背景に、主要な仕向け先の中国の景気が減速したため、受注額は7年ぶり、生産額と総出荷額は6年ぶりに減少した。

 総出荷台数を用途別に分類すると、19年は「組み立て」「マテリアルハンドリング(物の運搬作業)」「溶接」が上位となった。これら3つがロボットの主な用途として一般的に認知されている。組み立ては総出荷台数の22.5%、マテリアルハンドリングが同20.8%、溶接が同18.0%を占めた。
 また、業種別では「電気機械」が全体の34.2%と最も多く、次に「自動車」が同32.6%と続いた。このことから、産業用ロボットは電気機械の組み立てや、自動車の溶接などに広く使われていることが読み取れる。

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