[活躍するロボジョvol.6]ダイナミックな動きに魅せられて/村田機械 山田文恵さん
地道に確実に
山田さんは村田機械に入社してから今まで、スタッカークレーン(自動倉庫に荷物を入出庫するクレーン)や、水平方向に移動しながら荷物を搬送するシャトル台車と昇降装置を組み合わせた自動倉庫システム「Uni-SHUTTLE(ユニシャトル)シリーズ」など、製造業や物流センター向けの物流機器の設計を担当してきた。
物流会社は新しい物流機器を次々と導入して競争力を高めており、同社のような物流機器メーカーには短納期対応が強く求められる。そのため、山田さんは「物流業界のスピード感についていくこと」を意識して業務に取り組む。案件の規模によっても異なるが、詳細な仕様決めから、現場に納入して調整を終えるまでの期間は1年半ほどという。
納入する製品は、まだ世に出ていない新機種が多い。事前に試作機でテストを何度も繰り返して動作確認をするが、実際に現場に納入する製品は、試作機よりもさらに大きく、台数も多い。それだけに「製品が不具合なく稼働するのを見届けるまでは、正直不安が大きいです」と山田さんは言う。
日々の業務では「試作機のテスト段階で、不安要素を地道に取り除き確実になくすこと」を大事にし、不安を乗り越えて物流現場に新たな製品を届けている。
新型コロナウイルス禍で通販の需要が急速に拡大したが、その物流現場を支えるのが物流機器だ。「私たちの生活に欠かせない物流業界の裏側で、自分が設計を担当した製品が動いていると思うととても嬉しいです」と胸を張る。
形が決まっていないから面白い
山田さんは、子供の頃から科学実験のテレビ番組などが好きだった。大学では機械工学を学び、設計業務の仕事に就きたいと考えた。
偶然、就職活動で村田機械を見学した時、ダイナミックな動きをするさまざまな物流機器が目に留まった。「物流機器は同じような構造や形状に見えますが、細かく見ると一つ一つが違っており、決まった形はありません。さまざまな構造や形状の物流機器が自由に、そしてダイナミックに動くのが面白かった」と振り返る。
入社してすぐに携わったユニシャトルシリーズは、荷物を搬送するシャトル台車が横に移動し、昇降機がシャトル台車を上下に搬送するものだが、同社がユニシャトルシリーズを開発するまではこうした構造のシステムはなかった。「荷物をつかむための爪の設計や、最適なリニアガイドやモーターの選定を一から考える必要がありました。自分で考え、物流機器の構造や形状を設計するのが面白いです」と話す。
現在は後輩がいて、新入社員の指導も担当する。「新入社員や後輩が一人で設計できるように育て、チーム全体で設計のレベルを上げたいです」と意気込む。