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2021.06.30

[特別企画ラボラトリーオートメーションvol.3]まずは検査から。工業用薬剤メーカーの挑戦/第一工業製薬

研究所内の作業を自動化する「ラボラトリーオートメーション(LA)」に焦点を当てた特別企画も最終回を迎えた。今回は、vol.2の対談で登場した大手工業用薬剤メーカーの第一工業製薬の四日市工場霞地区(三重県四日市市)を訪問し、直近の取り組みを取材した。同社は今年の夏をめどに、霞工場の研究所にデンソーウェーブ(愛知県阿久比町、相良隆義社長)の協働ロボット「COBOTTA(コボッタ)」を導入する。導入先の工程やコボッタの選定理由、今後の構想とは――? 第一工業製薬のLA化の挑戦に迫った。

エレクセル開発部に導入

「開発した材料を提案する際に、その材料を使った電池の性能評価も含めて提供できる」とエレクセル開発部の東崎哲也部長

 第一工業製薬は京都市南区に本社を構える大手工業用薬剤メーカー。創業は1909年で、今年で113年目を迎える老舗企業だ。
 界面活性剤を中心に、ウレタン材料や電子デバイス材料の開発、製造など幅広い事業を展開する。

 同社は今年夏をめどに、デンソーウェーブのコボッタを研究所に導入してロボットを使ったLA化の第一歩を踏み出す。コボッタの導入先は、研究本部傘下のエレクセル開発部。リチウムイオン電池の材料の研究開発を手掛ける部署だ。

 東崎哲也エレクセル開発部長は「わが社は、実際の電池製造現場に近い環境で電池を試作でき、安全性や信頼性などを含めて実用的なサイズで性能を評価できる。開発した材料を提案する際に、その材料を使った電池の性能評価も含めて提供できるのが強み」と語る。

待ち時間を解消し作業効率向上へ

四日市工場霞地区のテクニカルセンター棟(第一工業製薬提供)

 三重県最大の人口を擁し、「四日市コンビナート」をはじめとした石油化学産業でも知られる四日市市。その中心地である近鉄四日市駅から北東に車で20分ほどの場所に、第一工業製薬の四日市工場霞地区はある。

 コボッタを導入するのは工場のテクニカルセンター棟内にあるエレクセル開発部の実験室で、試験電池の検査工程で使用する。専用の検査装置に試験電池をセットし、データを測定してから保存するまでの一連の作業を自動化する。従来は人手でやっていた作業を、コボッタに置き換える格好だ。
 検査工程では主に、所定の電圧を印加(装置に信号を送ったり、電圧を加えたりすること)してさまざまな周波数のパターンで、試験電池の抵抗変化などを調べる。十数種類の試験電池を一個ずつ、人が装置に付け外ししながら検査する必要があるが、「一回の検査につき、5~10分ほどの手待ちの時間がある。中途半端な待ち時間が断続的に発生するので、別の業務にも手を付けにくい」とエレクセル開発部の中山真志主任研究員は説明する。コボッタを導入すれば待機時間を解消でき、研究者の作業効率の向上につながる。

デンソーウェーブの「コボッタ」(写真は2021年1月28日撮影)

 ロボットシステムの構築には、デンソーウェーブとシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のカサイ製作所(愛知県北名古屋市、葛西泉社長)が携わった。
 グループ会社のカサイエレック(愛知県大口町、葛西泉社長)の立花大資沖縄事業所長は第一工業製薬のLAの構想をヒアリングし、今回の検査工程の自動化にコボッタを提案した。「コボッタは家庭用電源で稼働できるのがポイント。また、研究者が使い慣れたパソコンを使って制御できる点も大きかった」と述べる。

 材料開発によく使用する試験電池は名刺サイズほどの大きさで、最大可搬質量が500gのコボッタでも十分搬送できる。
 東崎部長は「実験室にはさまざまな作業があり、ロボットを多くの作業に活用したいとの思いもあった。そのため、他のシステムとの接続性に優れ、持ち運びがしやすいコボッタに興味を持った。人と一緒に作業ができ、操作しやすいとも聞いているので、ゆくゆくは研究者が誰でも使えるようにしたい」と話す。

  • エレクセル開発部で取り扱うリチウムイオン電池のサンプル

  • 試験電池の検査工程のイメージ。従来は人手での作業だ

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