ロボは食品の運搬にとどまらず/FOOMA JAPAN 2022
過去最多の874社が出展
FOOMAはアジア地域で最大の食品機械の見本市だ。45回目となる今回展には、過去最多の874社が出展した。
日本食品機械工業会の大川原行雄会長(大川原製作所社長)は主催者を代表して「食品の安全や安全、多様化が進む消費者のニーズ、加工現場の人手不足など、食品業界を取り巻く環境は以前から複雑だった。さらに今回のコロナ禍や環境への配慮など新たな課題も山積する。最先端の製品や技術、サービスの展示を通じ、少しでも課題解決に実りある展示会にしてほしい」と話す。
コロナ禍で外国人労働者を確保できないなど、人手不足は特に深刻さを増した。例年から産業用ロボットを伴う生産システムの展示はあったが、より発展的な使い方が注目を集めた。
熟練作業者のように、食材を切る
人工知能(AI)を使った外観検査システムなどを手掛けるROBIT(ロビット、東京都板橋区、新井雅海社長)は、レタスの芯を見極めて除去するロボットシステムを展示した。
2台のロボットを組み合わせて、1台でレタスを持ち上げる。もう1台には、カメラセンサーと芯の除去装置を組み合わせた独自開発のエンドエフェクターを付けた。
レタスを持ち上げ、芯のある側をカメラに向ける。すると、表面に見える芯の大きさから、AIが芯の奥行きなどを判断。その後、刃部を繰り出して、レタスに差し込んで除去する。
レタスは野菜の中でも、1グラム当たりの単価が高い。そこで、芯の周りの食べられる部分を可能な限り残したい。一方、芯を残し過ぎるとカット野菜などの品質低下などにつながる。結果的に熟練作業者の技術と経験に頼っている。
また、レタスの芯の形状は幅広い。そこで、刃の角度を柔軟に変えるために、専用機ではなくロボットを使ったシステムを開発した。
会場での展示のため稼働速度を落としているが、実際の導入先では熟練作業者と変わらない1個5秒程度で作業できる。
新井社長は「AIなどのソフトウエアだけでなく、除去装置などのハードの開発も手掛けるのがわが社の強み。レタスを大量に扱う現場では、1個当たり1グラムを多く除去しただけでも、年間で数千万円の損失になる。人手不足への対応だけでなく、作業品質の安定だけでも費用対効果は高い」と訴求する。
今後は、キャベツやハクサイなど他の葉物野菜への応用も検討している。
また、変わった方法で食品を切るロボットも展示された。
精電舎電子工業(東京都荒川区、渡辺公彦社長)は、自社製品の「超音波フードカッター」を固定し、台湾のテックマンロボットで焼き菓子を押し当てて切断する展示を見せた。
超音波フードカッターは、刃を超音波で振動させて、摩擦を減らし少ない力で食材を切る。その高い切れ味を生かし、ロボットで食品を切るシステムを考えた。
「ロボットに刃物を持たせると、協働ロボットでも危険。そこで刃物を固定する方法を考えた」(営業部商品企画課の大屋雄揮さん)
さらに、このシステムではロボットに付属するカメラに、焼き菓子のカット数を書いたカードを見せるだけで、焼き菓子の切り方を指示できる。
テックマンの国内代理店のプレミアエンジニアリング(千葉県船橋市、松本大亮社長)とシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のレステックス(千葉県松戸市、斉藤圭司社長)がシステム開発に協力。プレミアエンジニアリングの松本社長は「この方法なら難しい教示作業などをせずに、現場で簡単に使える。カメラを標準搭載するテックマンの強みを生かした」と胸を張る。