迫る「2024年問題」、物流業界の最前線に注目【前編】/国際物流総合展2023
「2024年問題」は目前に
同展示会は、日本ロジスティクスシステム協会(会長・大橋徹二コマツ会長)などが主催する物流専門展だ。今回展では「2024年問題」に対処するべく、出展各社が物流の自動化や効率化の提案を強めた。
2024年問題とは、24年4月からトラックドライバーの時間外労働時間の上限規制が適用されることで生じるさまざまな問題の総称。
現場ではドライバーが倉庫などに到着後、運送する荷物の準備や積み込みなどを待つ「荷待ち」の時間があり、長時間労働の要因の1つになっている。ピッキングや倉庫内搬送などの作業を効率化できれば、ドライバーの待機時間を減らせる。
会場では物流拠点の高度化を通して、こうした課題の解決を提案する企業が多く見られた。
新製品の特徴は、効率と自由度/ラピュタロボティクス
ラピュタロボティクス(東京都江東区、モーハナラージャー・ガジャン最高経営責任者)は、自動倉庫「ラピュタASRS」を初出展した。少数の部品を組み合わせて構築できる「モジュラーデザイン」を採用しており、導入後の拡張などもしやすい。
ラピュタASRSの保管棚は、たった3種類の部品で構成される。土台と柱、プレートというシンプルな部品を、ねじなどを使わずに組み立てる。
そのため倉庫内のレイアウトに合わせて、自由に形状を設計できる。
生産性を高めるため、ピッキングステーションにも工夫を凝らした。自動倉庫は通常、搬送ロボットの運んできた商品を作業者が受け取る。
ラピュタASRSでは、作業者が同時に最大で8台のコンテナから商品を受け取れるようにした。空になったコンテナは高速で次のコンテナと入れ替わるため、作業者は次々にピッキングを進められる。
さらに、カメラと人工知能(AI)を組み合わせてミスピックも防ぐ。カメラで撮影した作業者の動作をAIが解析し、異なる商品を手に取ろうとした際にアラートを鳴らす。
大橋由加プロダクトコミュニケーションマネージャーは「保管棚がシンプルな構造のため、工費や工期を削減できる。これまでAMRやAGFなどを開発してきたが、ラピュタASRSを通じて物流のトータルソリューションを提供したい」と話す。
24年に向けて意識に変化/ギークプラス
中国に本社を構える物流向けロボットメーカー、ギークプラス(日本法人=東京都渋谷区、加藤大和社長)は、「PopPick(ポップピック)」の新バージョンを披露した。
ポップピックは、AGVや作業ステーションなどで構成されるシステム。保管棚や荷役台(パレット)の下に潜り込んで搬送する自動棚搬送ロボット「EVE(イブ)」シリーズが、専用棚を作業ステーションに運ぶ。作業ステーションはクレーンが棚からコンテナを自動で取り出す仕様で、1時間当たり650箱を処理できる。
新バージョンでは構造や動作を最適化し、入出荷速度を高めた。
加藤社長は「24年が近づき、ユーザーの意識も変わってきている。人が集まらず、物流事業の継続のために自動化システムの必要性が増している」と語る。
また、棚卸しを自動化する「ウォークスルー型RFIDゲート」も注目を集めた。ゲート内のスキャナーで、全ての商材に取り付けた電子タグ(RFID)を読み込む。従来は、人がハンディースキャナーで一つずつ商材を読み込むケースが多かった。
ブースではAGVで保管棚を運び、ゲート内で回転することで商材を漏れなく自動認識するデモを実施した。