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2024.10.10

[注目製品PickUp! vol.72] 屋内外搬送の自動化で作業者の負担を軽減/eve autonomy「eve auto」

ヤマハ発動機と自動運転ソフトウエアの開発を手掛けるティアフォー(名古屋市中村区、加藤真平社長)の共同出資会社eve autonomy(イブ・オートノミー、 静岡県磐田市、星野亮介最高経営責任者<CEO>)は屋内外対応型の無人搬送ソリューション「eve auto(イブ・オート)」を提供する。星野CEOは「屋内外の搬送作業を自動化し、作業者の負担を軽減したい」と語る。今年は「納得の2台目」をキャッチフレーズに掲げ、イブ・オートのさらなる普及を目指す。

建屋間の無人搬送を実現

 イブ・オートは、ティアフォーの自動運転技術とヤマハ発動機の電動カート(EV)技術を組み合わせたソリューションだ。工場や倉庫の屋内外で無人搬送が可能で、路面が不安定な環境でも走行できる。

 EV車両には最大1.5tのけん引能力と300kgまでの積載能力があり、近距離無線通信(ブルートゥース)を利用して自動でゲートやシャッターを開閉する設備連携機能「eve autoコネクト」を標準搭載する。また、工場や倉庫の交差点で車両同士が安全に交差できるよう、先に交差エリアに入った車両が通過するまで他の車両が待機する「複数台調停機能」や障害物検知などの安全面に配慮した機能も備えている。
 
 星野CEOは「イブ・オートを使えば、従来の無人搬送車(AGV)や自律走行型搬送ロボット(AMR)では対応が難しかった屋外環境や建屋間の無人搬送を実現できる。狭い通路や傾斜地でも安全に走行できるため、人手不足の解消や作業の安全性向上にも貢献する」と胸を張る。

  • 障害物を検知して停止する

  • 段差のある路面も走行できる

ワンストップソリューションで提供

 星野CEOはイブ・オートの強みについて「単にEV車両を提供するのではなく、無人搬送をサポートするための包括的なパッケージソリューションを提供する点にある」と説明する。具体的には、EV車両の運行をボタン1つで管理・監視できるオペレーションツールやEV車両の定期メンテナンス、さらに万が一の事故に備えた「自動運転専用保険」などをワンストップソリューションとして提供する。
 これにより、顧客は個別にオペレーションツールなどを用意する手間が省け、イブ・オートの導入後すぐに無人搬送ができる体制を整えられる。また、定期メンテナンスや自動運転保険があるためEV車両の運用上のリスクも軽減でき、継続的な使用が可能だ。
 星野CEOは「EV車両を使った屋外の無人搬送は、国内ではあまり類を見ない。仮に後発の競合他社が同様のEV車両を模倣できたとしても、オペレーションツールや自動運転保険などの総合的なサービス面でイブ・オートが勝る。先行者としての立場を生かし、『顧客のかゆいところに手が届く』サービスを構築してきた」と語る。

現場の困りごとを解決したい

「作業者の負担を軽減したかった」と語る星野亮介CEO

 そもそも、星野CEO含めた立ち上げメンバーが屋外搬送の自動化に着眼したのは、ヤマハ発動機の新規事業開発本部に所属していた時に、浜松市浜名区にある同社浜北工場で他のグループが中心となって進めていた屋外搬送の自動化プロジェクトに関わったのがきっかけだった。
 「雨天や夜間に関わらず、広い敷地内を人が手で物を押しながら歩く姿を見て、作業者の負担を軽減したいと思った」と星野CEOは当時の思いを語る。

 そんな想いを胸に、屋外搬送の自動化プロジェクトの事業化を発案。2020年2月には、ヤマハ発動機が主にEV車両などのハードウエアを提供し、ティアフォーが自動運転機能などのソフトウエアを提供する形でeve autonomyを設立した。その後1年を待たずしてヤマハ発動機の浜北工場で、特定の条件下で運転を完全に自動化する自動運転の「レベル4」での無人搬送の運用までこぎつけた。
 そして、イブ・オートを22年11月に正式発売した。現在では全国40以上の拠点で60台以上のEV車両が稼働している。

 星野CEOは「工場や倉庫の現場で実際に困っている人々の課題が前提にあり、それらを解決するための手段として自動運転の技術を活用した。『現場の困りごとを解決したい』という強い思いが事業の成長につながった」と胸を張る。

「納得の2台目」を掲げる

本社の倉庫施設内にある「竜洋ショールーム」内の様子(提供)

 eve autonomyはイブ・オートのさらなる普及を目指し、現在は主に国内でのPRに力を入れる。その一環として、今年8月にイブ・オートの走行機能や操作性などをテストできるショールーム「竜洋ショールーム」を本社の倉庫施設内に開設。来場者は屋内外での無人搬送のデモをはじめ、電動ゲートやシャッターなどの設備との連携、複数台が同時に走行する際の運用方法などを見学できる。

「今年のキャッチフレーズは『納得の2台目』」と語る星野CEO

 また、昨年11月に開かれた「2023国際ロボット展(iREX2023)」や今年9月に東京都内で開かれた「国際物流総合展2024」などの展示会にも積極的に出展し、イブ・オートの認知度の向上を図っている。
 星野CEOは「今年は『納得の2台目』をキャッチフレーズに掲げた。まずは1台目で性能や利便性を顧客に実感してもらい、自然と2台目以上の導入につながるような戦略を展開する。多くの人がものづくりや物流の現場で快適に働ける環境を築きたい」と語る。

(ロボットダイジェスト編集部 山中寛貴)


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