ロボットに回転工具を持たせて切削/ファナック
最大級のブースを構えるファナック(E55)は、多数のロボットシステムを展示したが、中でもロボットによる切削加工システムは大きな注目を集めている。ロボットアームの先端に回転工具を搭載し、ロボットで切削加工する。「ファナックの高剛性ロボットならこの方式でも精度を出せる。ぜひ実加工を見に来てほしい」とロボット研究開発統括本部長の安倍健一郎常務執行役員は話す。
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最大級のブースを構えるファナック(E55)は、多数のロボットシステムを展示したが、中でもロボットによる切削加工システムは大きな注目を集めている。ロボットアームの先端に回転工具を搭載し、ロボットで切削加工する。「ファナックの高剛性ロボットならこの方式でも精度を出せる。ぜひ実加工を見に来てほしい」とロボット研究開発統括本部長の安倍健一郎常務執行役員は話す。
会期1日目の基調講演「ロボットが現場を変える」の2本目では、Mujin(ムジン、E02)の滝野一征最高経営責任者(CEO)が登壇し、「ソフトウェア次第で自動化設備能力が数倍変わる時代到来 知能統合プラットフォームが実現した次世代DX工場/倉庫」をテーマに講演した。滝野CEOは「今後の自動化システムには、ワーク(対象物)の切り替えの簡単さ、短納期、低コスト、拡張性の4つの要素が重要になる」と訴え、工場物流の自動化事例やデジタルツインを活用したシステム導入サポートなどについて語った。
会期1日目に展示ホールCのメインステージで、基調講演「ロボットが現場を変える」を開催し、安川電機(C32)の岡久学ロボット事業部長が「安川電機が考える未来工場 ~進化する姿~」をテーマに講演した。岡久部長は「自動化は単に省人化や省力化をするだけではない。自動化を通して見えるようになったデータによってさらなる価値を生む。データを活用することで、生産性や品質の向上につながる」と語った。会場は満員で、大勢の聴講者が耳を傾けた。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のトライエンジニアリング(E48)と、切削工具メーカーのイワタツール(E49)は、ロボットを使った切削加工システムを複数展示している。一つはロボットで付加製造(AM)した対象物(ワーク)を、もう一台のロボットで切削加工して仕上げる。実際に宇宙産業での導入例もあり、サンプルワークなども展示する。もう一つは、切削加工する工具を交換しながら複数の加工を施すシステムだ。工具を回転させるスピンドルを3方向に付けている。垂直多関節ロボットの先端軸を回転させてワークに押し当てる面を変えることで、穴開け加工やねじ山を切り出すタップ加工など、複数の加工をする。トライエンジニアリングの岡丈晴専務は「ロボットで切削加工をする利点は多い。それらが伝わるような展示にできた」と自信を見せる。
シチズンマシナリー(D23)は自社の自動旋盤に、新開発の「シチズンロボットシステム サイドエントリータイプ」を組み合わせ、加工後のいわゆる「後工程」を一貫して自動化した。 自動旋盤で加工した対象物(ワーク)を垂直多関節ロボットで取り出す。その後、簡易的に洗浄をし、圧縮空気で洗浄液を吹き飛ばすエアブローを施す。その上で外径計測をして、ワークを収めるストッカーに収納する。伊奈秀雄社長は「加工室の扉に対して背面側にロボットシステムを付けることで、段取り作業などをしやすい。また、スペース効率にも配慮した」と開発の意図を話す。
測定機器メーカーのミツトヨ(D37)は、対象物(ワーク)の形状を測定する3次元測定機「MiSTAR(マイスター)555」と組み合わせて使うロボットシステム「Mi-BOT e-system(マイボットイーシステム)」を出展している。保管棚と協働ロボットを一体にしたシステムで、保管棚にはワークを固定するジグを載せた台(パレット)を搭載する。ワークの固定が終わったパレットを棚にセットし、準備完了の合図としてその下にある棚のボタンを押す。すると協働ロボットが、ボタンの押された箇所からパレットごと持ち上げて、3次元測定機の機上にセットする。担当者は「ロボットの初心者でも簡単に扱える。保管棚全てにワークをセットすれば、ちょうど一晩で測定が終わる」とアピールする。
測定機器メーカーの東京精密(D24)は光学式のシャフト形状測定機「Shaftcom(シャフトコム) Cシリーズ」に産業用ロボットを組み合わせて展示している。シャフトコムは、接触式に比べて高速なのが特徴。それとロボットを組み合わせ、対象物の全数検査を提案する。担当者は「電気自動車(EV)の普及などでシャフトの需要が増え、品質保証の観点から全数検査を求められるケースが多い。そこで、自動化のニーズが強く、このようなシステムを構築した」と話す。
安川電機(C32)は「自律分散型ものづくり」を提案する。電気自動車のバッテリーの組み立てをイメージしたデモシステムで、ロボットが自ら判断してバッテリーモジュールやカバーを組み付け、3種類のバッテリーを生産する。
スギノマシン(D30)は、TIG(ティグ)溶接やファイバーレーザー溶接などの作業を自動化する溶接ロボットシステムを初披露した。自社製の産業用ロボット「CRbシリーズ」やシミュレーションソフトウエア「CROROROS(クロロロス)」などをパッケージ化しており、ワーク(溶接対象物)の形状に合わせてロボットの動作経路を自動生成できるのが特徴だ。
ロボットテクノロジージャパン(RTJ)2024が本日、ついに幕を開けた。開会式では古本伸一郎愛知県副知事や経済産業省製造産業局産業機械課の石曽根智昭ロボット政策室長、日本ロボット工業会副会長の太田裕之ヤマハ発動機上席執行役員がRTJへの期待を語った。