溶接ロボットに軸足を置き、周辺領域を開拓【後編】/ダイヘン金子健太郎常務執行役員
自社工場の自動化でエンジニア育成
――メーカーとしてロボットを販売する一方、自社工場の自動化にも取り組まれています。取り組んで良かった点は?
ノウハウを蓄積できたことやお客さまに見ていただく場ができただけでなく、人材育成の場にもなりました。ロボットのシステムを構築するには、エンジニアの経験値がものを言います。そこで、若手エンジニアに工場の自動化に取り組んでもらいました。失敗もたくさんしましたが、あえてとやかく言わず、彼ら自身に考えさせ解決させてきました。それがいい経験になって、今ではいろいろなシステムを考案する中核メンバーに育ってくれました。彼ら自身に考えさせるのではなく、やり方を教えていればもう少し早く自動化が完成していたかもしれませんが、彼らはよく辛抱して頑張ってくれたと思います。
――神戸市の六甲事業所内だけでなく、名古屋市や愛知県長久手市にもテクニカルセンター(TC)があります。
中部地方のTCは、開発拠点というよりはロボットの実物を見ていただくことに重きを置いています。溶接や加工の仕上がりをトライして確認してもらうために設けました。今後もTCを増やしていきたいと考えています。
――愛知県にTCを置く理由は。
自動車産業は溶接ロボットの最大のユーザーなので、愛知県を中心に自動車産業が集積する中部地方はとても重要なマーケットです。今でも自動車関連のユーザーの割合は高いですが、より力を入れたいと考えています。大手メーカーが多いので、最先端の技術を見ていただくために近場にTCが必要でした。
用途から逆算してロボット開発
――最近のロボットへのニーズは。
同じ性能でも、より細くコンパクトにとのニーズが強いです。また、従来の大手企業はロボットを導入することで品質の均一化を求めるニーズが強かったのですが、最近は大手、中小企業を問わず人手不足が深刻で、省人化のニーズが強まっていると感じます。溶接に関して言えば、溶接作業はロボット化しながらも、溶接する物をセットするのは人が担っていましたが、それもロボットで自動化したいというニーズが高まっています。
――協働ロボットについてはどう考えていますか。
現時点で製品化の具体的な予定はありませんが、大事なニーズの一つだと思っています。わが社にとっては具体的な用途(アプリケーション)を想定して開発するという考えは変わりません。用途から逆算し、協働ロボットが最適解であれば、開発したいですね。
――FA業界ではIoTやAIがトレンドです。
協働ロボット同様、無視できない要素です。具体的なメリットを生み出せると判断できれば、開発を推進したいです。使いやすく、品質の高いインターフェースとすることが前提です。今年8月に発売したIoT対応のロボットコントローラー「FD19」は、遠隔サポートや周辺機器との連携強化、生産情報の見える化を実現しました。
――販売後のサービスも重要です。
販売も重要ですが、期待通りのメリットを生み出し、安心して使っていただくためにもサービスは重要だと考えています。従来、営業とユーザーのサービスを別の子会社が担っていましたが、統合してサービスに注力します。提案時の購入前サービスを含め満足度を高めることで、次の購入に結び付ける考えです。ただ、サービスそのものを事業化するのではなく、リピート購入していただくことがサービスの対価になると思います。