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2019.08.26

「単純作業の自動化」を使命に、取り出しロボから物流、そしてSIerへ【前編】/スター精機

スター精機(愛知県大口町、塩谷国明社長)は射出成形機用の取り出しロボットなどを製造販売する。塩谷社長は「わが社の使命は、人がやっていた単純作業を自動化すること。人にはより付加価値の高い仕事に従事してもらいたい」と語る。主力事業の取り出しロボットはその一環で、同社は長年にわたりプラスチック製品の生産現場の自動化に貢献してきた。また、2007年にはロボットハンド専門の部署も立ち上げた。最近は、取り出しロボットで培ったコア技術を生かし、新しい市場の開拓にも努める。同社が事業領域を広げ続ける理由はどこにあり、そして今後は何を目指すのか? 塩谷社長に話を聞いた。

取り出しロボットが屋台骨

スター精機のメイン事業は射出成形機用の取り出しロボット

 スター精機は射出成形機用の取り出しロボットをはじめ、コンベヤーやストッカーなど工場の自動化(ファクトリーオートメーション、FA)関連の装置、ロボットハンドや「チャッキングパーツ」と呼ばれるハンドの要素部品などを製造販売する。
 特に取り出しロボットは同社の屋台骨で、これまで長きにわたり自動車産業や家電産業などを中心に、プラスチック製品の生産現場の自動化に貢献してきた。「わが社の使命は、人の単純作業を自動化すること。取り出しロボットはその一環」と塩谷国明社長は語る。

 射出成形機とは、プラスチックを成形加工する産業機械だ。
 プラスチックの成形品は一般的に①ペレットと呼ばれる米粒状のプラスチックを熱で溶かし②溶かしたプラスチックに圧力を加え金型に流し込み③冷やして固めて④固めたプラスチックを取り出しロボットと呼ばれる自動化装置で取り出す――工程を経て作られる。

 日本ロボット工業会(会長・橋本康彦川崎重工業取締役)によると、2018年のロボットの総出荷台数のうち取り出しロボットのシェアは4.7%で、産業用ロボット全体に占める割合は小さい。しかし、プラスチック製品の生産を自動化するには取り出しロボットが欠かせず、射出成形機の主要な周辺機器の一つとして広く普及している。

業種や仕向け地でニーズが変わる

食品産業などで力を発揮するハイサイクルの取り出しロボット「ZXシリーズ」

 同社の顧客層は自動車をはじめ、家電や食品、日用品産業など幅広い。自動車産業の集積地である愛知県に本社があるため、自動車産業向けの取り出しロボットを特に得意とする。

 グローバルでの販売体制や生産体制も強みの一つ。国内では全国14カ所に営業拠点、本社と島根県出雲市の2カ所に生産拠点を設けている。
 一方、海外には14の国と地域に16の現地法人を構える。また、中国に2カ所、イタリアと米国にそれぞれ1カ所の計4カ所に生産拠点を持つ。非上場のため売上高の内外比率は公表していないが、塩谷社長は「海外のウエートの方が大きい」と話す。

 取り出しロボットのニーズは、顧客の業種や仕向け地によって変わる。
 例えば、食品産業では、プリンやヨーグルトのカップのような薄物の成形品向けに取り出しロボットが使われることが多い。薄物の場合、成形のサイクルタイムが早いため、それに対応する高速駆動の取り出しロボットが求められる。短時間で大量の製品を成形するため、取り出しロボットには耐久性も要求される。

 また、塩谷社長は「産業の成熟度の違いによるものだと思うが、日本や欧米などの先進国とアジアではニーズが違う」と説明する。
 日本や欧米では標準品ではなく顧客の要望に沿った特殊仕様が求められる。一方、アジアでは標準品が採用されるケースが多いという。

得意なのは大型機

「自動化できるかどうかはチャッキングパーツが一つのポイント」と語る塩谷国明社長

 得意業種の自動車産業向けには、小型から大型まで幅広いサイズの取り出しロボットをラインアップするが、中でもバンパーなどの大型プラスチック製品向けの取り出しロボットに強みを持つ。現在は大型の取り出しロボットとして「TW-2000シリーズ」などをそろえる。

 射出成形機は一般的に「型締め力」と呼ばれる、金型を締める圧力の大きさで機械のサイズが決まる。同社は、型締め力が3000トンを超える超大型の射出成形機向けの取り出しロボットを1990年から製造し、長年のノウハウを武器に自動車の大型プラスチック製品の市場を開拓してきた。

 また、自動車の電動化の影響で、最近はセンサーやコネクターなどの小型製品の需要も拡大している。こうしたセンサーなどの小型製品は、1回の成形で多くの製品を同時に生産する「多数個取り」が主流だ。
 「今では32個取りも普通にある。同時に何個もの小型部品を成形するだけに、取り出しロボットには部品をいかにしっかりとつかめるかが求められる。自動化できるかどうかは、チャッキングパーツが一つのポイント」と塩谷社長は強調する。

 次ページで詳しく説明するが、同社にはチャッキングパーツなどを設計製作する専門の部署「Eins(アインツ)事業部」がある。アインツ事業部で培った技術を生かし、小型部品の多数個取りのニーズにも応える。

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