多品種少量生産の自動化に! ワーク脱着用のロボシステム/日成電機製作所
最大公約数のニーズを
日成電機製作所は、ガントリーローダーなどの工作機械の自動化設備を設計、製作する。工作機械メーカー向けの受注生産がメイン事業だが、NC旋盤用のロボットシステム「ワーク供給スマートロボット」も自社商品として新たに開発した。
NC旋盤とは、円筒形状のワークを切削加工する工作機械の代表機種の一つ。ワーク供給スマートロボットは、加工前のワークをNC旋盤に供給したり、加工後のワークを搬送したりする「脱着作業」を自動化するシステムだ。
主なターゲットは中小規模の金属加工会社。中小企業の多くは多品種少量生産で段取り替え(セッティングの変更)が多く、加工するワークが頻繁に変わる。そのため、ロボットを導入したくても、対象のワークが変わるたびにティーチング(ロボットに動作を覚えさせること)をしなければならず、大きな手間がかかる。ロボットを扱う人材の育成や、導入コストも課題だ。
こうした課題を解決するため、同社はワーク供給スマートロボットを開発した。
8kg可搬の三菱電機製の垂直多関節ロボット「RV-8CRL」と、ワークを置くコンテナ3つ、コンテナを所定の位置に移動させるトレーチェンジャーなどで構成される。コンテナの寸法は310×310(縦×横)mmだ。
まずは標準的なパッケージシステムとして顧客に提供する。搭載するロボットやコンテナの数、寸法は一定で、カスタマイズ対応を最低限に抑えて導入コストを削減し、納期も短縮する考えだ。
船橋晋吾社長は「顧客のニーズに個別で対応すると開発コストが膨大にかかる。そのため、多くの顧客に共通する『最大公約数』のニーズを捉えた上で、汎用的なシステムの開発に取り組んだ」と説明する。
レーザー技術を生かしたティーチングシステム
ワーク供給スマートロボットには、多品種少量生産の自動化に対応するためのさまざまな工夫を凝らした。
その一つが使い勝手の良さで、ロボットの動作設定やティーチングが簡単にできるのが特徴だ。基本的な動作プログラムはすでに作成されており、ワークをコンテナから取り出す位置やNC旋盤に取り付ける位置を設定するだけで脱着作業の自動化ができる。
ワークの形状を基に、並べた際のピッチ(間隔)を設定すれば、コンテナに収められるワークの数や取り出す位置は自ずと決まる。
しかし、ワークを取り付ける位置は、顧客が保有するNC旋盤によって千差万別だ。NC旋盤はプログラム通りに刃物を動かしてワークを削り出すだけなので、取り付け位置が少しでもずれると正確な加工ができなくなる。
そこで同社は、取り付け位置の座標を正確に割り出すため、レーザー技術を生かした独自のティーチングシステムを考案した。
まず、奥行き、前後、左右の計3軸のレーザー光を発信するジグ(補助器具)を、NC旋盤の主軸に取り付ける。ロボット側にはレーザー光を読み取るセンサーを搭載し、ロボットが垂直方向や水平方向にそれぞれ動きながらレーザー光を探索していく。1軸ごとにこの作業をすれば、レーザー光を検知した3軸の交点が導き出せるので、その情報を基にワークを取り付ける主軸の座標を算出する仕組みだ。
このシステムを使えば、ワークを取り付ける位置が簡単に把握できる。加工するワークが頻繁に変わっても効率良くティーチングができ、多品種少量生産でも脱着作業の自動化を実現できる。
船橋社長は「前例がないシステムで、特許も出願している」と語る。