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2024.09.25

連載

[SIerを訪ねてvol.49]何も分からない状態から積み重ねた経験/カトウ

カトウ(川崎市中原区、加藤欣吾社長)は製缶や板金、切削加工などを得意とする企業で、近年はシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)事業にも力を入れる。これまで自社工場の溶接工程の自動化などに取り組んできた。今年6月には自社工場で稼働するロボットシステムをパッケージ化して外販するなど、積み重ねた自動化のノウハウをSIer事業に生かす。加藤社長は「製造業にはロボットを導入したいが使い方が分からない、との悩みを持つ企業は多い。わが社の経験を生かし、そうした企業の自動化に貢献したい」と語る。

金属加工向け自動化パッケージ発売

 カトウは自社工場で進めてきた自動化のノウハウを生かし、SIer事業にも注力する。1957年の創業で、製缶や板金、切削加工などを手掛ける。特にアルミの加工が得意で、自動車や造船、半導体関連の引き合いが多い。

 これまで自動車向けの自動化装置などの実績がある他、自社工場にも5台のロボットを設置する。今年6月、金属加工業に向けて自動化パッケージ「ALEX Zero(アレックスゼロ)」を発売した。ファナックの協働ロボット「CRX-25iA」を組み込んでおり、工作機械のマシニングセンタ(MC)へのワーク(対象物)の交換作業を自動化する。

MCへのワーク供給の自動化パッケージ「アレックスゼロ」を開発した

 ワークを固定するジグ(補助具)を載せた台(パレット)と、そのパレットを収納する棚は自社で設計・製造した。ロボットがパレットから加工するワークを次々と交換するため、夜間や休日も無人で加工を続けられる。
 このシステムは、同社の工場で稼働する自動化システムが基になっている。加藤社長は「省スペースが特徴で、工場内の大幅なレイアウト変更などをせずとも導入しやすい」と説明する。製造業向けの展示会で披露したところ、さっそく引き合いがあったという。

初めての導入時の苦い経験

展示会でアレックスゼロを初披露した様子

 自動化パッケージの外販をはじめSIer事業に臨む背景には、同社が初めてロボットを導入した際の苦い経験があるという。加藤社長が会社を引き継いだのは2014年。当時の工場は古くから稼働する機械がほとんどだった。「このままでは世の中に取り残される」との危機感を持った加藤社長は、16年までにMCや数値制御(NC)旋盤、三次元測定機など新規設備を立て続けに導入し、それまで外注していた切削加工を自社でもできるようにした。

 その後17年に生産工程の自動化を狙い、初めて産業用ロボットを購入したが、ある問題が発生した。「ロボットの動かし方が分からなかった」と加藤社長は振り返る。「当時はまだ情報も少なく、ロボットを購入した商社に問い合わせても分からなかった。近隣に頼れるSIerもおらず、結局動かせないまま約一年が経過した」と言う。

 しかし、加藤社長はそこで諦めなかった。取引のあったロボットの周辺機器メーカーに相談したところ「せっかくなら自身で使い方を覚えてみては」との助言があった。ロボットを扱うための知識はほとんどなかったが、少しずつ学んでいき、安全講習も受けた。自動化したい作業を整理してまず溶接の自動化から着手し、それが完成した後に工作機械へのワーク供給を自動化するロボットシステムを構築した。
 加藤社長は「ロボットを導入したいが使い方が分からない、との当時のわが社と同じ悩みを抱える企業は製造業に多い。悩みながらも工場の自動化に取り組んできたわが社の経験を生かし、そうした企業の課題解決に適切な提案ができれば」と語る。

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