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2019.04.26

インタビュー

ロボット用ソフトで働き方を革新――浜松発スタートアップが目指す未来【後編】/リンクウィズ村松弘隆取締役

リンクウィズ(浜松市中区、吹野豪社長)は2015年3月に創業したスタートアップ企業(新しいビジネスモデルで短期間での急成長を目指す新興企業)。ロボットダイジェスト編集部は今回、創業メンバーの一人である村松弘隆取締役にインタビューを実施した。「人の業(わざ)を受け継ぐロボティクスで働き方を革新する」とのミッションを掲げ、これを実現するために産業用ロボット用の画期的なソフトウエアを2つ開発した。同社はこれら2つの製品などを生かし、何を実現したいのか。後編では会社設立の経緯に加え、同社が思い描くビジョンを詳しく聞いた。

創業メンバーの経歴が今のビジネスに

リンクウィズの製品の主なターゲットは自動車産業の溶接の分野

――前編では、溶接後の製品の全数検査用の自動化ソフト「L-QUALIFY(クオリファイ)」と、ロボットのティーチング(動作を記憶させる作業)用ソフト「L-ROBOT(ロボット)」の2つの製品について詳しく聞きました。いずれも主な需要先に自動車産業の溶接の分野が挙がりましたが、そもそもなぜ溶接に目を付けたのでしょうか。
 当社の創業メンバーは、代表の吹野と取締役の鈴木紀克、そして私の3人です。吹野は前職でソフトの開発に携わっていました。鈴木は以前、溶接用品であるトーチのメーカーに勤めており、そこでロボットを実際に使っていました。そして、私の前職は測定機のメーカーで、自動車産業とは何かとご縁がありました。われわれ3人の経歴こそが、今の当社のビジネスにつながっています。

――3人がやってきたことを融合した。
 当社は現在、産業用ロボットと3次元(3D)スキャナー、自社製のソフトウエアを組み合わせることで、ロボットが物体の形状を認識するシステムを構築しています。実は、現行のシステムのベースとなるプロジェクトは10年ほど前に既にありました。当時、吹野が在籍していた会社のプロジェクトでしたが、景気や業績の兼ね合い、技術的な課題などでプロジェクトはなかなかうまくいきませんでした。ですが、それから5年ほど経ち、ロボットの需要は格段に高まりました。当時のプロジェクトメンバーだったわれわれ3人はこれを追い風と捉え、もう一度チャレンジしようということで方向性が一致しました。

転機は「始動」プロジェクト

リンクウィズのメンバー。外国籍の社員も多数在籍する

――こうして2015年3月にリンクウィズを立ち上げた。
 そうです。最初は、知り合いの社長から会社の2階の空き部屋を間借りし、事務所として利用していました。当時は仕事がなく、われわれ3人の前職での付き合いをたどって何とか仕事を受注していました。

――創業から4年経ち、従業員数が21人にまで増えました。事務所も移転し、今ではガレージ風のおしゃれな社屋を構えています。ここまで成長したきっかけには何が。
 現在の社屋は、築40数年の倉庫をリノベーションしたものです。内装などのテイストは吹野の好みです。さて、ご質問の当社が大きく変わったきっかけですが、経済産業省が15年に実施した次世代のイノベーションの担い手を育成するプロジェクト「始動 Next Innovator(ネクストイノベーター) 2015」ですね。吹野がこのプロジェクトの一期生として選抜されました。

――どう変わったのですか。
 吹野は15年10月~11月にかけ、プロジェクトの一環で米国のシリコンバレーのスタートアップ企業を見学し、大きな刺激を受けました。そしてプロジェクトに参加してから、われわれが出会う人たちもガラッと変わりました。プロジェクトの概要が新聞などで報道され、当社の社名も掲載されました。人脈も広がり、結果的にINCJ(東京都千代田区、勝又幹英社長)やSMBCベンチャーキャピタル(東京都中央区、石橋達史社長)から出資を受けるようにもなりました。スタートアップ企業なので決して順風満帆ではありませんが、これらのベンチャーキャピタルの支援を追い風に今後もスピード感を持って経営に取り組んでいきます。さらなるビジネスの拡大に向け、今年はパートナー企業を通じて、米国や中国、欧州にも進出する予定です。

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