[SIerを訪ねてvol.24]SIerを支える「第三セクター」のSIer/ブイ・アール・テクノセンター
地域産業の高度化を支援
各務原市は「かかみがはらし」と読み、岐阜県の南部に位置する。県内で最も製造品出荷額が高く、航空宇宙や自動車、化学工業などさまざまな産業が集積する。
各務原市役所から北東に15分ほど車で進むと、岐阜県が1998年7月に整備した研究開発拠点「テクノプラザ」に到着する。今回訪問したVRテクノセンターは、そのテクノプラザ本館に本社を構える。
同社は岐阜県や各務原市、中小企業基盤整備機構、十六銀行をはじめとした金融機関、川崎重工業や中部電力といった民間企業など38社・団体の出資により93年に設立された会社で、いわゆる第三セクターに当たる。FA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会、会長=久保田和雄三明機工社長)の幹事会社で、中部地域のSIerで構成される「中部地域SIer連携会」の会員でもある。
地域産業の高度化を支援するのがVRテクノセンターの使命で、同社が管理するテクノプラザ本館の1階~3階の「テナント事業」と、CAD(コンピューター支援設計)ソフトやロボットの操作方法などを指導する「研修事業」、ロボットシステムやバーチャルリアリティー(VR、仮想現実)システムの開発、通信ネットワークの構築や運用保守を担う「SI事業」の3本柱を展開する。
プログラムの修正サービスも
SI事業を担うSI部には10人の従業員が在籍しており、主に画像処理システムやソフトの開発を得意とする。
自社製品を単独で開発して外販するのではなく、新事業や新製品開発に挑むSIerや機械商社、メーカー各社と手を組んで技術開発を支援するスタンスを取るのが特徴だ。共同開発の案件が多く、例えば機械商社の三機(名古屋市熱田区、木島正人社長)とは、市販のウェブカメラと小型コンピューター「ラズベリーパイ」を使った安価な画像処理システム「LF-Sticker(スティッカー)」を開発した。産業用途だけに限らず、介護施設向けの巡回ロボットを別の企業と共同開発した実績もある。
「顧客からは最先端の技術に関する相談が多く舞い込むため、わが社も人工知能(AI)などを含めた最先端の技術動向を常に把握するよう努めている」と高橋寛明統括課長は述べる。
また、最近はソフト開発のノウハウを生かし、SIerの業務サポートにも取り組む。
SIerの現場では、プログラミングの専門家ではない機械担当者が個別の案件ごとに四苦八苦しながらロボットの動作プログラムを作成するケースが多いという。高橋統括課長は「後任への引き続きまで想定して作成されるわけではないため、当事者が退職すると後任の担当者が再び四苦八苦しながら動作プログラムを修正しなければならず、現場の負担が増大する」と述べる。そこで、当事者でなくても簡単に修正や機能追加ができるよう、ロボットプログラミングの標準化やドキュメント化について支援するメニューを構想している。まずは国内メーカーのロボットを対象に検討し、今後海外のロボットメーカーにも広げる考えだ。