ロボット事業に挑むジャバラメーカー【前編】/ナベルホールディングス永井規夫社長、永井杏奈取締役
工作機械業界がメイン顧客
――まずは会社概要をお願いします。
永井社長:カメラ用のジャバラの専門メーカーとして、1972年に伊賀市で創業しました。その後、98年に「必要な時に伸びて不要な時に縮むもの」、2005年に「機能的なカバー」とのコンセプトを掲げ、カメラ用のジャバラだけではなく医療機器や工作機械、レーザ加工機用のジャバラにも事業領域を広げました。今は工作機械業界がメインの顧客で、全体の売上高の70~80%ほどを占めています。
――御社のジャバラの特徴や強みは?
永井社長:素材開発が強みです。わが社はジャバラ業界では後発に当たりますが、顧客のニーズをしっかりとうかがったうえで、最適な素材とその素材を生かした製法を組み合わせた製品を提供しています。これが評価され、医療機器業界などからは高いシェアをいただいています。
カバー製造に3Dスキャナー
――最近はロボット関連の事業にも注力しています。具体的な事業内容は?
永井取締役:ロボット用カバー「Robot-Flex(ロボットフレックス)」の販売と、テックマン・ロボットのTMシリーズの輸入販売の2つです。17年にロボットフレックスの事業を始めました。18年8月にテックマン・ロボットと代理店契約を締結し、TMシリーズも日本市場で販売しています。
――まずはロボットフレックスについてお願いします。事業立ち上げの経緯から教えてください。
永井社長:時代の流れは刻一刻と変化します。少子化や労働人口の減少により、日本の産業界は今後、縮小していくでしょう。「何か新しい事業に挑戦しなければ生き残れない」との思いがあり、そこで目を付けたのがロボットでした。クリーンルーム仕様のスカラロボット用のジャバラ製造でこれまでもロボット業界に携わっていましたが、17年からはロボットフレックスの供給も始めました。
――ロボットフレックスの概要や特徴をお願いします。
永井社長:ロボットは自由度が高く、どんな動きをするか分かりません。そこで、3次元(D)スキャナーを使ってロボットの動きを撮影し、そこから得たデータを基にロボットの動作に合ったカバーを製造しています。こうした特注品だけではなく、標準品としてTMシリーズ専用のカバーも開発しました。①防塵(じん)性能や防水性能に優れた「一般」②耐衝撃性を備えた「ブラスト用」③塗装ミストを吸着しロボットへの付着を防ぐ「塗装用」④工作機械と組み合わせて使う「耐油・耐クーラント」⑤火花などに強い「溶接用」⑥薬品への耐性に優れた「食品用」――の6種類のカバーを用途別に用意しました。ロボット用カバーもジャバラ製造と同じように、顧客のニーズをしっかりと聞いたうえで、最適な素材と製法を組み合わせて提供しています。
永井取締役:TMシリーズ専用のカバーは、塗装用と食品用は一体式ですが、それ以外は1軸ごとにカバーが分かれています。ロボットは1軸ごとに動きますからね。最大の特徴は回転軸をカバーする部分。カバー同士を篏合(かんごう、はめ合わせること)する機構を独自に開発し、回転軸をほこりなどからしっかりと守ります。特許も出願中です。「はめ合わせるのに時間がかかりそう」と思う人もいるかもしれませんが、簡単に取り付けられます。手順も動画で詳しく紹介しています。